
生後3ヶ月になると、赤ちゃんの体重増加はひとまず落ち着いてきます。しかし、体重がなかなか増えない、あるいは減ってしまった、そして心配なほど増えているなど、ママの悩みは尽きないものです。
そこで今回は、生後3ヶ月の赤ちゃんの体重が増えない、または減少している場合、体重が増えすぎている場合、それぞれの母乳とミルクの与え方を考えてみたいと思います。
体重の増減に悩んで、母乳やミルクの量とどう向き合っていけばよいのか悩んでいるママにとって、ご参考になれば幸いです。
生後3ヶ月の赤ちゃん、体重増加の基準は?
まずはじめに、生後3ヶ月の赤ちゃんの体重はどれくらいの割合で増加するものなのか、その基準からお話しましょう。
赤ちゃんの体重について、WHOでは「完全母乳の場合、生後6ヶ月までは1週間で100~200gの増加」を目安としています。これは1日あたり15~30gずつ増える計算です。
そして、生後3ヶ月の赤ちゃんの体重は、出生体重のおよそ2倍になっているのがもうひとつの目安。
しかし、出生時の体重が4000g近くある赤ちゃんの場合は、2倍ということにとらわれる必要はありません。あくまでも目安ですので、1日あたり、あるいは1週間あたりの体重増加を見て、順調に増えていれば問題はないでしょう。
赤ちゃんの体重が増えない場合の母乳・ミルクの飲ませ方
赤ちゃんの体重が伸び悩んでいる場合、もしかして母乳が足りないのかと自信を失ったり、赤ちゃんはきちんと育つだろうかと心配したり、あるいはミルクを増やしたいけれど母乳が減ってしまったらどうしようと不安になったり、さまざまな気持ちがママの中には渦巻いていることと思います。
それでは、そんな時の母乳やミルクの飲ませ方について、不安を解消するためのポイントをQ&A形式でお伝えしましょう。
体重が減っていたらミルクを飲ませるべき?
赤ちゃんの体重増加は、生後3ヶ月ころからゆるやかになります。
また、この時期から赤ちゃんは首がすわりはじめて運動量が増えてくるため、消費カロリーも今までより多くなります。
1日、1週間の間にも、体重が増えたり減ったりすることもありますので、赤ちゃんが元気で、よく動き、母乳をしっかりと飲んでいるようなら、少し長めのスパンで体重が上昇カーブを描くかどうかを確認してみましょう。
2週間ほどで体重増加が見られなくても、赤ちゃんがよく母乳を飲み、元気で健康状態や機嫌、寝付きなどに問題がないのなら、ミルクを足すという判断をするのは少し待ってもいいかもしれません。
もう1週間ほど様子をみて、それでも体重増加が見られない場合には、小児期で相談することをオススメします。
母乳量ってすぐに減ってしまうものなの?
母乳は赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激によって分泌されるホルモンにより、その分泌量や生産量が高まります。そのため、授乳の回数が少なくなり、刺激がなくなれば2~3日で減ってくると予想されます。
母乳の量をアップさせる大切なポイントは頻回授乳と乳頭への刺激ですので、赤ちゃんの体重が伸び悩んでいる、母乳が減っている気がするという時は、まず授乳回数を増やすことを意識してみましょう。
体重が増えなかったら頻回授乳をした方がいい?
頻回授乳は母乳を増やすために欠かせませんが、乳頭への刺激という点では、マッサージも有効です。
度重なる授乳によって疲れやストレスがたまってしまうと、母乳が出にくくなることもありますので、時々適度にミルクを足しながら、授乳回数をキープする、乳頭マッサージをする、といったことを心がけけましょう。
また、頻回授乳をしても赤ちゃんの体重が増えない場合は、赤ちゃんの体調がすぐれないこともひとつの原因として考えられます。
- 赤ちゃんが噴水のように吐く
- 便に血が混じっている
- 熱がある
- 顔色や動きが悪い
といった様子がみられる時は、早めに小児科を受診してください。
母乳が出ていないのに吸わせ続けるのは、赤ちゃんにとって良くないの?
母乳の出が良くないと感じているママは、出ていないおっぱいを赤ちゃんに吸わせることに対して罪悪感を持ってしまったり、母親失格だと思ってしまったりするかもしれません。しかし、ママのおっぱいを吸わせることは決して意味のないことではなく、まして良くないことでもありません。
赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらう吸啜刺激は、ママの母乳の分泌をアップさせる一番の方法ですし、また、赤ちゃんが上手に母乳を吸うための練習にもつながります。
それだけではなく、母子の密接なスキンシップによって絆が深まり、ママと赤ちゃん双方に良い影響をもたらしてくれます。自信をもって、赤ちゃんにおっぱいを吸わせてください。
いつまでたっても乳首を離してくれない赤ちゃん、母乳が足りないの?
赤ちゃんがいつまでも乳首を離さない、また、乳首を離すと泣いてしまうのは、母乳不足のサインであるとたびたび言われてきました。しかし、これは母乳が十分に足りている赤ちゃんにも見られる行動です。
赤ちゃんはただ単に遊び飲みでママのおっぱいを吸っていることもありますし、ママと離れたくない、口さみしい、などの気持ちから、お腹がいっぱいになっても乳首を離さないこともあります。
母乳が足りているかどうかは、赤ちゃんの体重の増え具合と排泄の量や回数、健康状態から判断しましょう。
母乳の成分が良くないから赤ちゃんの体重が増えないの?
母乳の成分には時期による差や個人による差があると言われていますが、成分の違いが赤ちゃんの体重増加に大きな影響を与えることはありません。体重が増えない原因は、母乳の成分ではなく、やはり量にあります。
生後3ヶ月で、1ヶ月の体重増加が500gを下回るようなら母乳が不足していると考えられます。一定の期間で赤ちゃんの体重増加が見られず、健康状態に不安を感じる場合は、必要な量の母乳が飲めていないと考えられますので、ミルクを足すことも検討してみましょう。
もう完母になれないの? と落胆する前に
赤ちゃんの体重が増えていないと、母乳が足りないのではないか、このままもう完全母乳になれないのではないかと不安や焦りを感じるものです。
そして、赤ちゃんに十分な母乳を飲ませてあげられない自分を責めたり、ダメな母親だと感じて落ち込んでしまったりすることもあるでしょう。
母乳が出ないという悩みは、産後すぐから非常に多くのママが直面するものですが、それが赤ちゃんの体重の停滞と結びついて自分につきつけられることで、ママは今まで以上に自信を失ったり、イライラしてしまったりするかもしれません。
しかし、母乳育児は赤ちゃんとママが二人三脚で、それぞれの親子のペースで行うもの。そして、赤ちゃんの飲みたい母乳量と、ママが与えられる母乳量が一致した時に自然に完母になるのであり、完全母乳に移行できずにイライラするのは本末転倒。目的と結果が逆になっている状態と言えます。
今、赤ちゃんにとって本当に必要なものは何でしょう?ママがストレスをためて大変な思いをしながら完全母乳で育つことなのか、それとも十分な量のミルクでお腹を満たすことなのか。ママはよく考えてみてください。
赤ちゃんの体重が増えない、減ってしまう、そして元気な様子が見られないなどの場合は、必要な量の母乳やミルクが飲めていない可能性を考えて、適切な量のミルクを足す、あるいは小児科を受診して、赤ちゃんの栄養状態をみてもらい、どのような授乳方法が最適なのかを相談してみましょう。
その上で、ママが母乳量を増やすために、食事から十分な栄養を摂ること、乳房のマッサージをして母乳をつくる環境をととのえること、そしてしっかりと休息を確保して気分をリフレッシュすることなどを心がけてくださいね。
母乳相談などで助産師による母乳マッサージを受けたり、授乳の仕方を指導してもらったりするのも良い方法です。
体重が増えすぎて心配! これって大丈夫?
それでは逆に、赤ちゃんの体重が増えすぎている場合はどうでしょうか?赤ちゃんが順調に育っているのはママも嬉しい限りですが、あまりにも体重が増えて心配だったり、母乳やミルクを飲み過ぎているのではないかと不安になったりすることもあるでしょう。
しかし、生後3ヶ月の赤ちゃんの場合は、体重が基準値より上回っているからといって、ただちに肥満とはなりません。医療的な視点でいえば、それは「しっかりと栄養が摂れていて、成長できている」ということ。
赤ちゃんの体重が増えすぎることによる害や悪影響などはありませんので、母乳やミルクを減らす必要もないと考えられます。赤ちゃんが十分に母乳やミルクを飲めていて、お腹が張ったり便秘や下痢をしたりする様子が見られないのなら、その量が赤ちゃんにとっての適量であると思って構わないでしょう。
今からこんなに体重が増えていて、大人になったら肥満になるのではないか、などと心配するママもいますが、体重増加が著しい赤ちゃんが将来肥満になるというデータは今のところ存在しません。
赤ちゃんが成長するに従って動きが活発になれば増加は落ち着いてくるでしょうし、身長が伸びれば体つきも自然にスリムになってくるため、体重が大幅に増加している赤ちゃんも、多くは1歳頃にかけてだんだんと平均的な体重・体型に落ち着いてきます。
あまり考えすぎず、十分に母乳やミルクを飲んですくすく育っている赤ちゃんをかわいがってあげましょう。
まとめ
以上、生後3ヶ月の赤ちゃんの体重増加と、母乳やミルクの飲ませ方についてお伝えしてきました。赤ちゃんの体重の増減はママにとってとても気になるものですが、この時期からは、日々成長する赤ちゃんを、今までよりも長いスパンで落ち着いて見つめることが必要かもしれません。
- 生後3ヶ月の赤ちゃんの体重増加は、完母の場合1週間あたり100~200gが目安
- 1ヶ月あたりの体重増加が500g以下の場合は母乳不足の可能性がある
- 体重が増えなくても、赤ちゃんがよく母乳を飲んでいるなら2~3週間は様子を見る
- ミルクを足すのは、明らかに母乳が不足していて赤ちゃんの体重が減ってしまう時
- 頻回授乳と乳頭マッサージ、そして十分な休息と栄養で母乳量を増やす工夫を
- 完全母乳にこだわらず、赤ちゃんの健康を考えて十分な哺乳量を確保する
- 体重が大幅に増えているのは、しっかり成長できている証拠
こうしたポイントを頭に入れて、赤ちゃんの体重の変化と向き合い、上手に母乳やミルクの量を調節していけるようにしましょう。
参考資料
病気がみえる vol.10: 産科 医療情報科学研究所
看護師・看護学生のためのレビューブック第18版 メディックメディア
はじめて出会う育児の百科 小学館
乳幼児身体発達評価マニュアル 国立保健医療科学院保健師さんへのインタビュー