イクメンという言葉が定着して数年。子育てに積極的に関わったり、育児休暇を取ったりするパパの姿もだんだん珍しくなくなりつつありますね。
2人の子供なのですから、どちらかに負担が偏ることなく、お互いに協力しあって大変な育児期を乗り越えられるようになるのは、素晴らしいことです。
しかし、イクメンが増えるのはいいことなのですが、中にはイタイ勘違いをしてしまう自称イクメンもちらほら。
よくあるのが「育児なんて簡単」というもの。挙句の果てには「だから男性の育児休暇なんていらない」なんて言い放ちます。
自称イクメンはなぜ、育児を楽だと勘違いしてしまうのでしょう。
それは多分、ママの必死の頑張りにあぐらをかいて、単なる「育児ゲーム」を楽しんでいたからなのではないでしょうか。
育児をしていないのだからそりゃ楽だよね
「子育てなんて楽」「仕事の方が大変」などと豪語する男性は、まだまだ少なくないようです。
いまだに公の場で「生後3ヶ月まではミルク飲んで寝てるだけ」と、一昔前の育児書かと思うようなことを言い放ち、しかも「生まれて1年が一番楽」と宣言してしまう人すらいます。これがすでに子育てを経験している男性の発言なのですから、耳を疑いたくなりますね。
女性が妊娠・出産によって受ける肉体的、精神的なダメージの大きさは、計り知れません。しかも、そのダメージを受けてすぐに、不眠不休の育児がスタートします。これをもってして「楽」などと言えるわけがないことは、多くの人が理解していることでしょう。
一方、男性であるパパは、自分の体に傷を負うこともなく育児をスタートできますから、女性と比較すると楽は楽なのでしょう。体力もありますから、疲れて辛いと感じることは少ないのかもしれません。
しかし、1歳までの育児を楽だと言える男性がいたら、その人はおそらく、きちんと育児に関わっていなかった人でしょう。
妻を見ていれば想像もできない言葉
数時間おきに母乳やミルクを飲ませる、泣き止まない原因をひとつひとつ探り、それでも泣き止まない赤ちゃんを抱っこし続けて何もできない。
赤ちゃんの肌着の洗濯、哺乳瓶の洗浄や消毒、離乳食作りと後片付けなど、しなければならない家事は増える一方なのに、家事はおろか自分のトイレや食事もままならない。
言葉も通じず、いつ泣き出すかわからない赤ちゃんと24時間一緒。睡眠時間は激減し、体力が削られて精神的にも不安定になります。
そして、1歳までの赤ちゃんはちょっとしたことが命の危険に直結します。
起きている間は目を離せない緊張感、寝ている間ですら「何かあったらどうしよう」と心配する精神的な負担もずっと続きます。
こんな状況を1年もの間まともに経験していたら、口が裂けても楽だとは言えないと思うのです。
「生まれて1年が一番楽」と言える男性は、このような負担を全てママに押し付けて見ないふりをし、赤ちゃんの機嫌のいい時だけちょっとあやしたり遊んだりする、まさに育児のいいとこ取りをしてきた自称イクメンにほかなりません。
ママが一生懸命赤ちゃんと関わっているからこそ、自分が楽をしていることに気づかない。
自称イクメンがしているのは、「育児」ではありません。ママにお膳立てをしてもらった上で楽しい「育児ゲーム」をして、ご満悦になっているだけです。
お膳立てされなくなったから育児が大変に思えてきた?
育児に「一番楽」な期間なんてありません。
新生児には新生児の大変さがありますし、魔の2歳児には2歳児の大変さ、思春期には思春期の大変さがそれぞれあるものです。
また、置かれている状況も一人ひとり違います。
充実したサポートを受けられるパパやママもいれば、そうでないパパやママもいますし、何より、同じ状況だとしても、そこから感じる辛さや大変さは個人によって変わってきます。
自分が楽だったからといって、他人も楽だとは限りません。しかも、その楽という感想は、育児の表面的な部分しか見ていないために生まれた勘違い。
それを今まさに育児をしている全員に当てはめて、上から目線で「今が一番楽だよ」などと嘲笑するかのように振る舞うのは、想像力と思いやりの欠如そして育児に対する無知を露呈する、浅はかな態度だとしか言いようがありません。
男性の育児休暇制度は本当に必要ないと言える?
自称イクメンの中には、「男性の育児休暇なんていらない」と制度そのものを否定する方もいます。しかし実際は育児休暇という制度がないと休みたくても休めないパパも沢山いるのではないでしょうか。
確かに、育児休暇という制度がなくても育児をするパパはするし、逆に制度があっても育児をしないパパはしないでしょう。
下手をすると、育児休暇が取れてこれ幸いと、ママと赤ちゃんをほったらかして出かけてしまうパパも、少なからずいるかもしれません。そういう人にとっては、制度としての育児休暇は無駄なだけです。
しかし、育児をしたいのにパパが激務のために休みが取れず、ママの負担が大きくなってしまうケースもあります。
ママ自身、あるいは赤ちゃんに病気などがあって、通常の育児よりも手厚いサポートが必要になるケースもあります。
こうしたさまざまなケースに対応するためにも、制度として男性の育児休暇取得をプッシュしていくことは大切です。そうでなければ、必要なサポートが得られず、どんどん追い込まれていく夫婦が増えてしまいます。
イクメン気取りは同姓への配慮もない
パパだってスーパーマンではありません。
仕事も育児も頑張らなければならない状況にれば、大きな負担を感じ、心身に影響があらわれる場合もあるのです。
実際に、産後にパパがうつ状態になるパタニティーブルーは、仕事と育児とのバランスがうまく取れないことが原因のひとつとも言われています。
育児休暇を取得することでキャリアへの影響を心配するパパもいるでしょうが、制度がきちんと機能し、将来への不安を感じることなく堂々と育児休暇を取得できるようになれば、パパの精神的負担も減るかもしれません。
育児休暇の制度があっても、それを取得するかしないかは各家庭の自由です。
日中はママが1人で頑張れるから、パパは仕事に集中してほしいという家庭では育児休暇を取ることまで考えなくていいかもしれません。体力と気力には自信があるから大丈夫! というパパや、職場からの理解が得られ、時短勤務や定時帰宅ができて育児に時間をかけられるパパもいるでしょう。
しかし、休みが必要な時にパパが休みたくても休めない、という状況を作らないためにも、育児休暇という制度は絶対に必要です。
産後のサポートをしたいと望んだ時、それを実現できる環境が整っているのといないのとでは、パパやママの精神的な負担も大きく違ってきます。
産後のママのサポートも、パパの大切な役割
もうひとつ言うと、男性の育児休暇はただ単に育児に関わるためだけなく、産後のママをサポートするためにも重要な役割を果たします。
産後間もないママは、重傷を負った状態と同じです。
里帰り出産でもない限り、大怪我をしたのと同じような体で24時間体制の育児と家事をするのです。その時、パパの手があればどれだけ助かるか。
産後の無理はできない期間、水仕事や買い物などをしてくれるだけで、どれだけ負担が減るか。
また、ホルモンのアンバランスによって、ママは精神的に落ち込み、孤独感と閉塞感に苛まれがちになります。そんな時、信頼できるパートナーが側で支えてくれるだけで、どれだけ救われるか。
こうしたママの体力的、精神的なサポートも、本来の育児休暇の役割でしょう。
「生まれてから1年は楽だから男性の育児休暇なんていらない」という話は、男性が育児休暇に何をすべきかということを全く理解していない自称イクメンの戯言だということがわかります。
置かれている状況や、その人の感じ方によって育児の大変さは違うもの。
また、男性の育児休暇の必要性や、それを取得すべきかどうかについても、それぞれの夫婦が話し合い、環境に合わせて決めるべきです。
そこに思いやりを向けられずに「赤ちゃんの頃が一番楽」「育児休暇なんていらない」と言い切ることができるのは、育児の上っ面しか見ていないために、恥ずかしい勘違いをしてしまっている証拠です。
公衆の面前でこんなことを口にするのは、自分が無知であり、想像力の欠片もないことを晒すようなもの。また育児に心血を注ぐ妻への冒涜です。
その無知と想像力の欠如がどれだけの人を傷つける可能性があるか、少し考えたいですね。
本気論 本音論 長谷川豊公式ブログ
「育児休暇は大事で~」と未だに言ってる人たちへ
~お前ら、絶対子育てしてないだろ~
http://blog.livedoor.jp/hasegawa_yutaka/archives/46830142.html