先日、インターネット上で販売されていた母乳の中から、通常の母乳と比較して1000倍もの細菌が検出されたことが、大きく報道されました。これを受け、感染症や衛生上のリスクが高いとして、厚生労働省や消費者庁から注意喚起がなされるという事態になっています。
このニュースを見て、不安を覚えたプレママも多いことでしょう。なぜ、ネットで販売されている怪しげな母乳を買うほど、ママは追い詰められてしまうのでしょうか。
今回は、ネット販売の母乳を買うことの危険性と、そこまで追い詰められないための心構えについて、お話したいと思います。
買った母乳は偽物? 母乳が出ないことで追い詰められるママ
先日の毎日新聞の記事には、インターネットを介して母乳を購入し、赤ちゃんに飲ませたママの記事が掲載されていました。
「何とかして母乳を飲ませたい」
母乳が出ないことで自分を責め、精神的に追い詰められ、藁にもすがる思いで母乳を売買している業者を頼ったのでしょう。しかしその母乳は、少量の母乳にミルクと水を加えたもの。細菌も多数確認されたと言います。その母親は「子供に謝りたい」とコメントしたそうです。
この記事を読んで、母乳が出ずに悩み抜いた経験を持つ私自身、胸が締め付けられるような思いでした。
普通は、インターネットで販売されている母乳があったとしても、
- 「どこの誰の母乳かもわからないのに、そんなものを買うなんて!」
- 「そこまでする必要ないんじゃない?」
と思うものですよね。
ところが、そんな怪しげな母乳にも手を出したくなってしまうのが、母乳が出ないことに悩み、追い詰められているママなのです。
母乳にこだわるのは理屈ではない
産後のママたちが母乳にこだわり、何とかして母乳を飲ませたいと思うのは、理屈ではありません。頭では「足りなければミルクでもいい」とわかっていても、何かに追い立てられるように、母乳を出すことに必死になるのは、言葉だけでは説明しきれない、ママ独特の感情かもしれません。
- 母乳を求めて、口をパクパクさせながら泣く我が子の顔を見れば、母乳が出ない自分を責めてしまう。
- ちょっとでも母乳が出れば、「頑張れば完母になるかも」という期待を抱いて、ますます頑張ってしまう。
- 周りからの「母乳出ないの?」「努力が足りない」の声に打ちひしがれ、大きな罪悪感を持ってしまう。
- 頭の中が母乳でいっぱいになり、何が何でも母乳で育てたい、育てなきゃいけない! と思い込んでしまう。
産後の不安定な精神状態も相まって、悩みや思い込みはどんどん深くなります。
こうした母乳に対する思いは、ママ自身、自分でどうすることもできないものでもあります。だからこそ、ネット販売の怪しいものですら、「母乳」と謳われているだけで神々しく見えてしまうのです。
不衛生な母乳には感染の危険性も
冷静に考えれば、病院でも何でもない個人の業者がネットで販売する母乳なんて、不衛生で危険極まりないことはよくわかります。
実際に、今回新聞記事で取りあげられた母乳については、母乳には含まれていないβラクトグロブリンというタンパク質や、レンサ球菌などが検出されたと言います。こうした不衛生な、偽物まがいの母乳を摂取すれば、赤ちゃんがアレルギー症状を起こしたり、病気にかかったりする可能性もあります。
また、イギリスの研究機関では、ネット販売の母乳について調べたところ、多くの母乳でバクテリアの繁殖が見られたことを指摘しています。さらに、認可された母乳バンクとは違い、さまざまな検査がなされないまま販売されるこうした母乳には、B型、C型肝炎ウイルス、HIV、ヒトT細胞白血病ウイルスなどの病原体が存在しているリスクも否定できないようです。
出産を控えているプレママは、ネット販売の母乳にこうした危険性があることを、よく理解しておいてください。そして、どんなに精神的に追い詰められても、怪しげなサイトで販売されている母乳には決して手を出さないよう、心に留めておきましょう。
母乳を買うほど追い詰められないために
実際に出産してみなければ、母乳が出るかどうかはわかりません。しかし、出産前に母乳についての知識をあらかじめ持っていれば、母乳が出ても出なくても、気持ちがそれほど不安定になることはないと考えられます。
出産を控えているプレママは、母乳で悩まないために、次のようなことを覚えておきましょう。
1.母乳は出なくて当たり前!
産んだ直後から滝のように母乳が出る初産婦さんは、まずいません。最初は、母乳が出なくて当たり前!出ると思い込んでいるから、いざ出なかった時のショックも大きいのです。実際、私も「母乳なんて産めば出るよね」と軽く考えていたからこそ、痛い目にあいました。
通常、母乳育児が軌道に乗るまでは1~3ヶ月ほどかかります。初めて母乳を出す、飲ませるという体験をするのですから、体も心も、慣れるまでに時間がかかるもの。最初は母乳が出なくて当たり前、出たらラッキーくらいの気持ちでいきましょう。
2.「完母」に過剰なあこがれを抱かない
母乳だけで育てることを「完母」と表現しますが、この完母、いわゆる完全母乳育児にあこがれるあまり、追い詰められるママは多数います。
しかし、完母というのは頑張ってそうなるものではありません。赤ちゃんの飲みたい母乳の量とママの出す母乳の量、つまり需要と供給のバランスがピッタリと取れた結果が、完母です。
赤ちゃんやママも体質によって、このバランスが取りにくいことは多いもの。
結果として完母になるならそれに越したことはありませんが、完母のために過剰な努力をすることは、自分を追い詰めることにもつながります。あこがれを抱き過ぎず、こちらも完母になったらラッキーくらいの気持ちを持っていた方が、精神的に楽になります。
3.ミルクの準備をしておく
母乳で育てるつもりでも、ミルク道具は一式そろえましょう。上でも述べたように、産後すぐに母乳が出るようになるとは限りません。
産後の体で買い物に行くのは本当に大変ですし、ミルクの用意をしていなかった自分にも、ミルクをあげなければならない自分も腹立たしく、大きな罪悪感を覚える原因となりました。
産前に「ミルクも必要かも」と思って準備しておくのと、産後慌てて買いに走るのでは、ママの心の持ち方も大きく違ってきます。備えあれば憂いなしの気持ちで、用意だけはしっかりしておきましょう。
「母乳でもミルクでもいい」と自分と周りに言い聞かせて
「母乳で育てるのは当たり前」「母乳は自然に出るもの」と妊娠中に思い込んでいると、いざ母乳が出ないとなった時、大きなショックを受けます。そのショックが、今度は「母乳でなければいけない」という強迫観念に変わり、精神的に追い詰められることにつながっていきます。
少なくとも、私はそうでした。
産後に抱く母乳に対するこだわりや思い込みはかなり強固で、理屈や理想論だけであっさり変わるようなものではありません。だからこそ、出産前から母乳にこだわり過ぎないことが大切。母乳でもミルクでも、赤ちゃんが元気ならどちらでもいいと、ぜひ自分や周りの人に言い聞かせてください。
ネット販売の危険な母乳に手を出してしまうほど悩み、苦しむ必要はどこにもないのです。
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