自覚症状は十人十色だと思います。まず私は当初乳腺炎になっていると気が付きませんでした。ただし予兆は思い返せばいくつかあったんですよね…。
私の場合、自覚症状は
- 1.『赤ちゃんが授乳を嫌がる』
- 2.『寒気と体温上昇』
- 3.『胸のほてり』
の三つ。
1.『赤ちゃんが授乳を嫌がる』
赤ちゃんがずっと泣いていたのでお腹が減っているのかなと思い、授乳しようとしたのですが口を付けてもすぐに離してしまいました。もしかしたらオムツが汚れていて泣いているのかもしれないと思ったらオムツは真っ白のまま。
それでもエンエン泣いているので困っちゃって。時間を置いて授乳を試みたらやっと飲んでくれたんです。けど明らかに飲みっぷりが悪い。いつもなら乳首を離さないように必死に吸い付いているけれど、この時は離しては飲みを繰り返しておりぎこちなかった気がします。
2.『寒気と体温上昇』
季節は暑い夏だったのに背筋が何故かブルブルでした。もしかしたら夏風邪でも引いたのかと心配しましたがその他風邪の症状はなく。しかし体温を測ってみると37度4分まで上がっていてビックリ!
でも外気が暑ければ体温も高くなりますよね?だから熱が出ていても気にせず過ごしていました。
3.『胸のほてり』
これもはじめはよく分からなかったんですよね。何か熱いなとしか思いませんでした。元々子供の頃から体温が高めだったからスルーしていたのです。
これが私の乳腺炎の初期の自覚症状です。後々乳腺炎で苦しむだなんてこの時は予想できませんでした。
乳腺の切開手術の前段階の処置はコレ!
「エコーで調べますから寝ててくださいね」
自覚症状が次第に辛く、体調不良がすぐに酷くなったので急いで近所の乳腺科へ診察をお願いしました。そこですぐに乳腺炎だと判明。
病状を詳しく調べることになったのです。エコーは幸い痛みもなくて寝てるだけで終わりました。でも乳腺炎は深刻なようで医師は難しい顔をしています。
「この部分のズームをすると分かりますが触診で痛みが感じられた部分の下に液ダマリが確認できます」
モニターを見るとぼよよんとした液体を発見。
「これって何ですか?母乳ですか?」
「症状からして母乳と膿…どちらかと言うと膿でしょう。開いてみなければ分かりませんけどね」
(うわ~胸がこんな風になっていただなんて…)
何だかショックでした。
「このままだと皮膚が破けて自壊(じかい)します。なので今回液体を針で抜いてみましょうか」
「針でですか?麻酔は!?」
「これは麻酔しないでできる処置ですから安心してくださいね、ほんの数分で終わりますし寝たままでOKです」
何が安心なのでしょうか、絶対痛いに違いない。考えただけでも怖く、私は口数も減って黙ってしまいました。
「痛いとは思うけどすぐ終わるしキズも残らないです。負担も少ないので頑張りましょう」
宥めるように言われても怖いです…。この針での膿吸引の処置は注射器(吸引器)を看護婦さんが持ち、医師がエコーを片手に針で探りながら胸から膿を抜くという方法で行われます。
「この針はよく曲がるので膿が点在していてもキャッチできますからね」
何やら解説からして高性能な針らしいですけど痛いのは遠慮したいですよ。そうこう考える間に針が刺されて処置がスタート。針がグネグネ曲げられる度に痛くてその都度手を握ってやり過ごしていました。
結局5分程度で終了しまして、いざ終わってみると麻酔がなくても我慢できるくらいの痛みだったと謎の達成感。胸は針の刺した跡が青くなっていた程度で済みました。
乳腺炎の真っただ中でも授乳は大丈夫?
「かなり膿が溜まってましたね、この注射器にあるのは膿です」
さっきの処置で使った注射器の中には白っぽい膿がたくさんありました。てことは…
「つまり私は膿入りの母乳を与えていたんでしょうか?」
「膿入りは大袈裟ですけどね。別に乳腺炎中でも授乳は制限しなくても大丈夫。むしろぐんぐん吸い取ってもらうと症状が悪化せずに済みます…けど」
「けど?」
医師がまた難しい顔をしたので先が気になります。
「けどですね、乳腺炎中の母乳は味が悪いので赤ちゃんは飲みたがりません。微妙に酸っぱくだったりしょっぱくなっていて受け付けてくれなかったりする。 まあでもその内諦めて飲むようにはなるでしょう。」
「だからあまり赤ちゃんが進んで飲んでくれなかったんですね」
「子供は正直ですからね、マズイものはマズイと感じたら拒否しますよ」
どうやら私は美味しくない母乳を与えていたようでした。だからあの時あんなに飲みたがらなかったのか。後で赤ちゃんに謝ろう、無理やり飲ませようとしてごめんねって。
「今回抗生物質を処方しますので無くなったらまた来てください、ほんの数日の処方ですから授乳はストップせずとも構いません。上手く飲ませるように頑張りましょう」
「薬入りの母乳を与えても赤ちゃんに影響はないですか?」
もし母乳を介して赤ちゃんに何らかの悪影響を及ぼしたら?考えただけで心配で不安になってしまいます。
私は授乳期間中に体調不良になっても一切の緩和薬を飲まないように乗り越えてきました。だから今回も…と思うもののあんな膿を見てしまったら薬に頼らざるを得ません。
「この薬なら大丈夫です。それに短期間ですから影響はないでしょう」
それを聞いて安心しました。
「ですがこれで乳腺炎が治まらないのであれば次回は乳腺切開手術をするつもりです、覚悟してください」
(ん、手術?……手術!?)
「しゅ、手術ですか?入院してですか!?」
急な手術にうろたえる私。
「乳腺炎の患者さんがよくやる手術ですよ、手術なんか言いましたが診察室でやれる小規模レベルです。カンタンに説明すると局所麻酔を施し胸に穴を開けそこから膿を出す。たったこれだけです。一回やるだけでかなり乳腺炎の症状が緩和されます。まぁあまり心配しないで治療に専念しましょう」
その日は帰宅してから医師の指示通り水分補給をしつつ胸を冷えピタで冷し続けました。
乳腺炎だと判断するいくつかのポイント
「やっぱり食い止められなかったですねえ」
医師は椅子に掛けながら患部の触診を始めました。触診とは患部を指で押したりなぞったりする行為です。時々強く押されるとズキンズキンと胸が痛みました。
「いだだだ(痛い)」と声を発してしまう急激な痛みが感じられて乳腺炎が快方に向かっていないことが分かります。
「間違いなく乳腺炎が悪化しています、ほらここ押すと痛いでしょう?」
そう言ってグググと指で押すんですよね。
「はい、痛いです…」(さっきから痛いって言ってる!分かったなら何回も押さないでくださいよ!)
不思議と胸全部は痛くはないんです、でも少し場所をずらすとズキンズキンと痛いんです。
「それに胸の肉に軟らかさがありません。通常ならば胸が脇へ流れます。ですから中で炎症を起こしている可能性が高いでしょう」
確かにあお向けになって自分の左右の胸を見比べてみると全く違うんです。乳腺炎になっている左胸は寝ても形がドーム型、しかし健康な右胸は張りつつも少し脇へ流れていってます。
「乳腺炎になると胸が張ってパンパンになります。それに押すと感じる痛みが判断ポイントです」
「けど普段も胸が張ってて押すと痛みがありますよね。乳腺炎と普通の時の違いがよく分からなくて…」
乳腺炎も出産後も胸が張っていますよね?違いはどう見分けるのでしょうか?
「いくつか乳腺炎を疑うべきポイントはあります、
- まず胸の張り具合としこりの有無。乳腺炎は岩のように胸がカンカンに硬くなります。それに伴ってしこりが生じる場合が多いです。
- 次に皮膚の色。赤みがあるのであれば間違いなく乳腺炎の炎症が起きているでしょう。
- そして体温と倦怠感。乳腺炎になると微熱が出ます、酷ければ高熱です。またセットで倦怠感も感じられます。
ですから面倒ですが産後も毎日検温した方が良いと思います。痛みは先述のどれかの症状が合さっていれば乳腺炎だと見ていいでしょう。」
上半身が疲れてだるかったりするのは子供の抱え過ぎなどの単なる育児疲れだと思っていたんです。それがまさか乳腺炎だったとは驚きました。
「実は体がだるかったんですけどてっきり疲れかと見過ごしていました…」
「それが良くないんです、お母さんは赤ちゃんのことで頭がいっぱいだからどうしても自分のことを後回しにする。これも乳腺炎を悪化させる原因です」
麻酔をしても手術は痛くて苦しみました
抗生物質と膿吸引処置では乳腺炎が治癒しなかったので手術をすることになりました。
「手術はこうやってしますので、あなたは落ち着いてくださいね」
医師によると切開手術は次の①から⑤の流れでやるそうです。
- 1.エコーで膿の溜まっている場所を確認
- 2.切開部分をマーカーで印付け
- 3.麻酔を注射
- 4.マーカーで印付けした部分を切開し、小さな穴を開ける
- 5.膿を出す
- 6.おまけ 乳腺炎の治りが悪いと判断されたらドレーンを穴に装着
多くて6つもすることがあるだなんて……たくさんあり過ぎです!
私は痛みに弱いので手術に耐えられるでしょうか?説明を聞いただけでもう手術を受けたような気分……。でも胸の状態が良くならず悪いらしいので頑張って手術を受けるしかない。ここまで来たのだからと私は覚悟を決めたのです。
「麻酔をします、チクッとしますね」
医師は針を胸に当てながら言いました。胸に注射を打ったのは初めてです。腕と手の甲なら何度かあるんですけどね。
さて経験はないのでこの時は体が強張っちゃって息も止まったまま。麻酔なんですがチクッとどころではなくてズキッとでした。
しかも一瞬ではなくて痛みが長く続いたと思います。胸って脂肪ばかりだから注射の痛みなんか少ないと見くびっていたらとても痛かったですよ。けど時間が経つと痛みも薄れて感じなくなりました。
そこから手術開始です。
医師はメスを手に取り胸に当てて何かをしています。メスを手に、と書きましたが実際には小心者なのでまじまじとは確認していません。
(何だか寒くなってきた…)
人間って緊張し続けたら指先から冷えていくんですね。診察室は暖房が付いておりあまり寒くないはずなのですが震えが止まらない。このまま緊張が長引いたら手術に支障を来しそうなので壁の方をじっと見て気を紛らわすことにしました。
診察室にはカチャカチャと金属音が響いており、それがやけに耳に届きます。自然と手術中に思い浮かべたイメージは恐ろしいものになりがちでした。
だから必死で昔旦那と行った旅行の思い出や今流行りのお笑い芸人のネタをグルグルと回想していたんですよね。これで少しは楽しくなって気分も紛れるだろうなと思ったんですよ。
何とか楽しくなるであろう思い出を回想していましたが血がタラタラと垂れてきたのが分かり、ウッと顔を顰めてしまいました。ただ血が垂れているだけだったのですが、その時は緊張感から些細なことでも気分が悪くなる原因となってしまっていたんです。
看護婦さんが顔の顰めに気が付き「今の嫌な感じでしたよねーすぐ拭きますから大丈夫ですよ」とガーゼを当てて血を吸収してくれました。すぐ私が何に嫌悪感を覚えたか看護婦さんが察知できたということは同じ手術を受けた他の患者さんもそうだったのかな?
「うっ、いた!ううー!」
私は思わず唸り声をあげました。恐らく「4」か「5」の段階に入ったのでしょう。痛みから体を動かしてしまいましたが看護婦さんがすかさずガシッと私の肩を押さえてガッチリ固定。
「動くと危ないのでじっとしてください!動かないで!」
注意を受けたけど本当に痛みを感じると体って勝手にビクビク動くんですよ。
(すいません!私だって動かしたくないんです。勝手に動くんです!)
このままだとまた動きそうだからベッドにツメを立てて耐える作戦で乗り切ろう!でもこれも痛みには敵わず。
「いたっ!痛いです、麻酔、効いてまっ、すか?」
途切れ途切れこんなことを最低5回は言ったと思います。
「ま、麻酔、麻酔を…お、おね…」
「ごめんなさいね、もう終わりに近いのですいませんが麻酔は我慢してください。これから膿出しになりますよ」
(そっそんな~)
残念ながら麻酔を再度施す暇はなかったのでした。そして穴が潰れないよう開いた状態を固定しながら「5」がスタート。
力いっぱいに胸を押してやります。方法は意外と原始的だなと思いました。てっきり膿を何らかの機械(掃除機みたいな?)で吸い取るのかと思っていたんですよね。なんて考えている間にも医者は前のめりになり、体重を掛けつつ押し続けます。
強く血の匂いがしてきてこのまま嗅ぎ続けていたら体調が悪くなるかもしれないと感じました。
(じゃあ口呼吸にして匂いが分からないようにしてみよう!)
思い付きから口呼吸に切り替えてみたんですが「口での呼吸は呼吸が浅くなってリラックスできなくなるのでゆっくり大きく吸いましょう」と医師から指摘されちゃいました。
「右半身だけをベッドに付けてください、そうそうちょっと傾けて!OKです、枕を挟んで体の傾きを変えます」
指示されてその通りにするとサッと小さな枕が差し込まれました。それから脇腹の方から入念なマッサージが始まったのです。体を傾けるのはどうやら万遍なく膿を出すためみたいですね。
何回か押しを繰り返して手術はやっと終了!
時間にして30分弱の乳腺炎の切開手術がやっと終わりました。頑張って乗り切れたけれど、もう絶対に受けたくないと思ったのは言うまでもありません。
切開手術の費用はいくらくらい掛かったのか?
手術が終わり身の回りの片付けが済んでから胸を見てみると一センチちょっとの穴が開いているではないですか。ぽっかり開いた穴からは真っ赤な肉が見えていてゾゾゾ~と怖くなりました。
怖くても自分の体なんですけどね。真っ赤な肉を見てホラー映画を思い出しました。
あれだけ痛みがあったというのにいざ手術が終われば穴は小さめ。驚きました、とっても痛かったのでてっきり五センチくらいは穴が開いているかと想像していたんですよね。
「穴は次第に塞がりますので見て怖いかもしれないけど心配しないでください。そしてしばらくシャワーで汗を流しましょう。もう手術は終わったので緊張しなくてもいいですよ。ハッハッハ疲れましたね、お疲れ様です」
ハッハッハにイラッとしたけれど怒る気力もなく素直に「ハイ…」と答える私。
「手術は辛いけど頑張った方が良い場合もあるんですよ。この前した血液検査と細菌検査の結果も微妙に数値が悪かったからどちらにしろ私は手術をしなければって考えてましたがね」
実は手術の前に血液検査と細菌検査をしているんです。血液検査は採血をするだけ、細菌検査は膿を採取するだけで患部の状態や数値が分かります。
そして帰る前に診察費の精算。切開手術ですが数万円もしませんでした。おおまかには数千円程度でしたね、そこに薬代を入れても一万円はしないと思います。もちろん保険適用内なので手術と言えども費用に関してビクビクする必要はありません。手術っていくら掛かるんだろうという心配をしているのだったら早めに治療を受けて元気になった方がいいですね。
うるさい旦那も役に立ちました、乳腺炎の発見は旦那のおかげでもあります
実は乳腺炎ではないかと言い出したのは旦那なんです。旦那は同僚に子供が生まれたのを見て「うちにも赤ちゃんが欲しいね!」と言うようになりました。そう言い出すからには育児書を読むなどして早々とイクメン化していたのであります。
だから乳腺炎の兆候も知っていたようで、
「その胸の張りは変だ、もしや乳腺炎のしこりかもしれない」
こんなことを何回も言っていたんです。
「熱計りなよ」
「左右の胸の張り具合がこんなに違うからこれは怪しい」
聞いてるとうるさくて面倒でしたが、旦那の予想通り乳腺炎になっちゃいました。それで私が子供を生んだ掛かり付けのクリニックに行こうとしたら「こっちの乳腺科に行った方が良い」
こう言うんですよね。
「掛かり付けのクリニックの方がカルテあるよ」
「乳腺炎は産婦人科よりも乳腺科の方が色々対処しやすいんだよ」
いつから旦那は医者になったんだ!?もう言ったら聞かないし、しつこいからこうして乳腺科に行ったんです。こんな話を乳腺科医にしたら……。
「それで正解かもしれないです」
「どうしてですか?赤ちゃんの母乳のことだから産婦人科が妥当ですよね?」
「産婦人科にも乳腺炎の処置ができる人がいるだろうけど抗生物質を処方するに留める場合も多いんです。だから乳腺炎の悪化を食い止められないなんてこともよくあります。なので外科的処置が迅速に行える乳腺科の方が対応が良い場合もあります」
うーん、結局旦那が正しかったみたいです。帰宅してどうだったか報告したら「ほれ俺の言う通りだったろ~」すごい得意顔でした。
イラついたけど旦那の言い分が正解だったように思います。だからちょっとした変化でも旦那さんに報告すると何らかの気付きがあるかもしれないですね。