医者が「もうダメかも」と思うほどの、かなりキツイ乳腺炎を体験したママのお話です。なるべく優しい表現を心がけていますが、壮絶なものが苦手な方はやめたほうがいいかも。今回は乳腺炎がどんどん取り返しの付かない方向に進んでいきます。
乳腺炎の末期的症状
ここでこんなにも乳腺炎を悪化させた私の全身状態を説明しましょう。
まずは右乳房の腫れ。これは熱をおびて日増しにひどくなっていき、この頃はすでに右の乳房全体が大きくなったように見えました。
患部は直径5センチほどに赤黒く変色しています。そしてひどい頭痛&吐き気&発熱。病院にいきたいと医者嫌いの私が切に願ったのですから、それはそれは尋常ではない吐き気なのです。
そしてなんと言っても乳房の痛み。この痛みも強烈で、恐らく頭痛も乳房の痛みが引き起こすものではないか思います。
出産が痛さレベル10だとすると、確実にこの痛みは8・・・、いや8・8といったところでしょうか。(医者嫌いが故の無用な痛みをその後も数々経験しますが、いまだこの痛みレベルはボス級だとおもいます。)そのレベル8.8の痛みを抱えて頼みの綱の義母に電話をしたら断られ、旦那は出張、娘は学校。八方塞がり・・・そんな言葉が頭の中を渦巻いていました。
そして後悔のピークはやってきた
どうにもならない状況でも、育児は待ってくれません。長男は乳を求めて泣き、尻の不快を訴えてきます。
右の乳房はとっくに吸わせることができなくなっていました。触られただけで飛び上がるほど痛いのです。
ちなみにこれは乳腺炎の割と初期の段階からのことです。長男がチュッチュと吸うリズムでズキンズキンと痛むので、授乳はスキンシップの時間ではなく苦痛を伴う給餌の時間に。吸われるたびに
「うおっ!・・・あうっ!」
と叫ぶ母。スキンシップとは程遠い苦行の時間となりました。
しかも、もし乳腺炎になって炎症を起こした「膿」のようなものまで飲んだら大変だと思い、右の乳房からの授乳は早々にやめていたのです。
私は空腹を訴える長男に左から与えようとしますが、長男を抱き上げることが出来ません。仕方なく長男に枕をあてがい、上から覆いかぶさるように授乳するしかありません。
これはもう立ったまま出産する草食動物の授乳です。シマウマに成り果てた自分、ズキズキ痛むおっぱい、飲みづらい体制で食事を強いられる長男。この3つが重なったとき医者に行かなかったことを心底後悔したのでした。
穴から何か出てきた!?
シマウマ授乳をしながら恐る恐る右乳房を確認すると、赤黒く変色した部分の真ん中になにやらポツンと穴らしきものがあいています。その穴はすこしジュクジュクした様子で中から何かが染み出しています。
「とうとう噴火した・・・!」
乳房を噴火させるとはかなりの異常事態。しかもこの日は土曜日だったのです。主人の帰宅予定は翌日日曜日の夕方。かかりつけ医は土曜日の午前しか診療を受け付けていません。しかも娘は朝から高校受験の模試のため留守にしていました。これはどういう状況かというと、診察が受けられるのは最悪翌週の月曜日になるかもしれない・・・。という危機的状況だということです。。
しかし私は頭の片隅でこうも思ったのです。
「膿が出ちゃったら万事解決ってことでは・・・?」
そうです、病院に行くより数倍不快な事態になっているというのに、この私の脳内では病院行きを回避するための回路が再び作動し始めたのです。この回路の作動により、息子を連れて診察を受けるという選択肢は心の隅に追いやられていきました。
噴火後一旦収まったかに見えた乳腺炎
開いた穴をよくよく見てみますと、確かに噴火口のような穴から血膿のような液体があふれています。それは少しずつではありますが確実に私の体外へと滲出していました。
ココから先お食事中の方はご遠慮ください。
血と混ざったものはベージュ色のドロリとした液体です。透明感のまったくない、カフェオレ色の練乳状の膿が乳腺の異常を物語っていました。
痛さをこらえて噴火口周辺を押してみると、ドロリとした液体が流れ出ます。噴火した後はいくらか右おっぱいが軽くなったような気もしたのですが、今となっては儚い希望にすがった結果の現実逃避だったのかもしれません。
仕方なく私はそこに抗菌作用のある軟膏を塗り、上からガーゼを当ててテープで止めておきました。まさに「臭いものにはフタ」というべき処置でしたが、ガーゼを貼って患部が見えなくなるとあら不思議。なんとなく気分も落ち着き、乳房の痛みも和らいだような気がして、とりあえず月曜日までは仕方がないと自分に言い聞かせました。
夕方帰宅した娘
午後6時ごろになり娘が帰宅をしましたが、食事も喉を通らず真っ青な顔の私を見て驚いた娘は、乳房どういう状態にあるのか見せろと要求してきました。私がガーゼを貼った右乳房をしぶしぶ見せると娘は
「まさか、穴が開いたんじゃ・・・。」
仕方なく噴火をしたことを白状すると、即刻病院へ行けと言います。しかし
「膿が出たらいくらか楽にになったから月曜日で大丈夫。月曜日は必ず父さんに休んでもらって病院にいくから。」
と娘に約束をしました。長年付き合っている娘ですから私の医者嫌いはお見通し。完全に疑いのまなざしを向け、
「あんた、いくらか楽になったなんて完全に気のせいだからね。覚悟を決めて必ず病院に行くように。」
と念を押されたのでした。
さらに広がる噴火口
その日の夜。いくらか胸の様子が楽になったと思ったのもつかの間、時間が経ち膿が溜まるにつれてズキンズキンと痛みは増していきます。
ガーゼを貼った部分を、ラップと紙テープでカバーしてお風呂に入ったのはいいのですが、どうやら血流が良くなると同時に炎症部分がお祭りを始めた様子。激しくなった血流に乗って痛みはますます調子に乗ってズンドコ駆け巡ります。午前中に当てたガーゼはマグマ(血や膿)によりぐっしょり濡れています。
「どうやらこれは冷やしたほうが良さそうだ。」
私はアイスノンを取り出し、
「冷やす前にガーゼを取り替えなくては!」
とテープをペリリ・・・、と剥がしはじめました。
テープを全部取ってはみたものの、ガーゼが剥がれ落ちるでもなく右乳房に貼りついたまま不気味に沈黙しています。ガーゼを軽く引っ張ってみると右乳房の噴火口が軽く引っ張られるような感覚があるところをみると、血膿が糊となってガーゼと噴火口をしっかり密着させているのでしょう。
しかし密着した部分を指で慎重に剥がしながら、何とか汚れたガーゼを取り去りました。傷口は、朝見たときよりも一回り大きく、噴火口の中には赤や黄色の得体の知れないドロドロしたものが詰まっています。その奥には赤い肉がほんの少しのぞいていました。
私は傷口とガーゼがくっつかないように大量の軟膏を塗り、新しいガーゼを当ててすぐさま患部を封印。今見たものが何だったのか、今ひとつ状況がつかめないほどパニックになる中、頭に浮かんだことは唯一つ。
「これはまずい・・・。」
私の頭の中には警告音が鳴り響いています。傷口の直径はほんの1cm弱でしたが、その穴は深く、恐らく炎症を起こした乳腺にまで達していたのでしょう。
長男を連れて土曜の午前診療に行かなかったことを激しく後悔しましたが、夜になった今となっては完全に後の祭り。あとは翌日の日曜を何とか乗り切るしか道はありません。幸いアイスノンで患部周辺を冷やすと傷みはグンと楽になったので、その晩は何とかやり過ごすことができました。
しかしこの平和な夜があけると、私の乳腺炎は前代未聞のとんでもない事態に発展していくのです・・・!
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