
- 「これって乳腺炎?」
- 「乳腺炎かもしれないけど、どうすればいいの?」
- 「病院に行かなきゃダメなの?」
乳腺炎は放っておくと悪化して、赤ちゃんもママも辛い思いをすることになってしまいます。
乳腺炎を経験したことのないママや、母乳育児をスタートさせたばかりのママは、乳腺炎のような症状が出ていても、理由をつけて放置することがあります。
そんな新米ママが抱く乳腺炎についての疑問にお答えしていきましょう。
目次
- 乳腺炎についてのQ&A
- 1.乳腺炎の症状は?
- 2.乳腺炎では必ず熱が出るの?
- 3.乳腺炎の痛みって、どんな痛み?
- 4.しこり、白斑って、どんなもの?
- 白斑は、乳頭にできる白い小さなニキビのようなもの。
- シコリの段階で対処して予防しよう
- 5.どんな人が乳腺炎にかかりやすいの?
- 乳頭の形にも注意
- 乳腺炎の症状が悪化するママの特徴
- 母乳育児中であればいつでもつまりやシコリは発生する
- 細菌感染を防ぐコツ
- 6.脂っこいものを食べても問題ない。乳腺炎と食事の関係について
- 疑似科学に振り回されず、美味しいものを食べてストレス解消
- ハーブティーは乳腺炎解消に効果あり
- 7.乳腺炎の治療法って、どんなもの?
- 8.乳腺炎の時は授乳してもいいの?
- 今と昔はやり方が違う
- 不味いおっぱいで赤ちゃんに嫌われないために
- 乳腺炎の重症度と授乳
- 9.やっぱり病院に行かないと、ダメ?
- 乳腺を悪化させると切開手術に
- まだ余裕が有るうちに先手を!
乳腺炎についてのQ&A
ここでは、子供2人を育てる間に、5回乳腺炎にかかった私が、自分の体験をもとに、乳腺炎ついての基本的な情報をお伝えします。
1.乳腺炎の症状は?
体内で母乳がどんどん作られるにもかかわらず、母乳の通り道である乳管が十分に開いていなかったり、つまったりすることによって乳腺の中に母乳がたまり、さまざまな症状が出てきます。
乳腺炎といえば、乳房が痛くなって、高熱が出て…という症状がよく知られていますね。しかし、強い痛みや高熱が出るのは、細菌感染を起こした場合。
乳腺炎になりかけの「うつ乳」の状態や、授乳を始めたばかりのママがかかりやすい「うっ滞性乳腺炎」では、
- 乳房全体が腫れる
- 乳房の一部が痛い、赤くなる、熱を持つ
という症状が最初に見られます。
人によっては、それに加えて
- 乳房の一部が固くなっている(しこり)
- 乳頭に白い塊ができる(白斑)
- 赤ちゃんを抱っこしたり、腕を上げたりすると乳房が痛む
- 脇の下のリンパ節が腫れる
- 微熱が出る
といった症状があらわれることもあるようです。
また、乳頭の傷から細菌が入り込んだり、うつ乳やうっ滞性乳腺炎がきっかけとなって細菌感染を起こしたりする「急性化膿性乳腺炎」では、
- 全身の倦怠感、頭痛、寒気
- 38.5℃以上の高熱
- インフルエンザの時のような身体の痛み
- 乳房全体の腫れ、熱感、痛み
といった症状が見られます。
また、乳房全体が張って固くなり、静かにしていても強い痛みを感じたり、赤ちゃんに授乳すると激しく痛むことや、腫瘍のようなものができることもあります。こうなると、炎症をしずめるための医学的な治療が必要になります。
様子を見ていて良い症状、スグに病院に行けない症状等、一口に乳腺炎と言っても症状によって重症度が違います。コチラの記事で確認してください。
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2.乳腺炎では必ず熱が出るの?
初期のうっ滞性乳腺炎でも37.5℃前後の微熱がでることもあります。しこりやつまりによる弱い痛みや違和感のみで、熱は出ないことも多いです。
しかし、細菌感染を起こした急性化膿性乳腺炎の場合は38.5~40℃前後の高熱が出て2~3日続くことがあります。また、脇のリンパ節が腫れたり、発熱にともなって悪寒、頭痛、関節痛などの症状もあらわれます。
熱が出たときの対応はコチラも参考になります。
3.乳腺炎の痛みって、どんな痛み?
乳腺炎の始まりの痛みは、なんとなく乳房がチクチクするという程度のものや、違和感であることが多いようです。腫れや赤みが出てくると、その部分は熱を持ち、皮膚がピリピリとしてきます。軽いつまりやうつ乳の場合は、しこりがあっても痛みを感じないこともありました。
このように、症状が軽い場合には、早いうちに適切な対処をすることで自然に改善することもできると考えられます。
症状が進むと、腕を動かす、赤ちゃんを抱っこする、姿勢を変えるなどの動作でズキズキした痛みを感じるようになります。
また、乳房全体が痛み、少し触れただけでも激痛を感じたり、赤ちゃんに乳房を吸われると、催乳感覚とは全く違う、突き抜けるような耐え難い痛みを感じたりするため、授乳が困難になることもあります。
痛みの初期には次の記事の対策を試してみてください。痛みの症状が和らぐかもしれません。
4.しこり、白斑って、どんなもの?
触るとその部分だけぽっこり腫れている、またはコロコロした石が入っているように感じるのが、乳腺炎の初期にあらわれるしこりです。また、肌の上から触ると動きます。
白斑は、乳頭にできる白い小さなニキビのようなもの。
乳口炎ともいい、母乳の出口がつまるため、しこりや乳腺炎に発展することもあります。
白斑には、赤ちゃんに吸われると痛みを感じるものと、そうでないものがあります。赤ちゃんに吸ってもらったり自分で取り除こうとしたりしても取れず、苦労するママも多いようです。
シコリの段階で対処して予防しよう
しこりや白斑は、放置すると乳腺炎を引き起こす原因となります。見つけた時点でマッサージや積極的な授乳、医師や助産師の診察を受けるなどして症状を解消することが必要です。
私はこのようにして白斑を取り、その後予防しました。その時の体験談です。
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5.どんな人が乳腺炎にかかりやすいの?
乳腺炎にかかりやすいのは、産後間もなく、母乳の分泌量や赤ちゃんの飲める量が安定していないママが多いです。- 母乳がたくさん出るのに、赤ちゃんがなかなか上手に吸ってくれない(赤ちゃんがおっぱいを浅く咥える、つぶし飲みをする等)
- 頑張って母乳を出そうとするあまり、搾乳しすぎて母乳の分泌が過剰になってしまう
このようなトラブルが乳腺炎を引き起こします。
乳腺炎の初期(急性うっ滞性乳腺炎・うつ乳)になる原因は、乳房の小葉という器官で作られた母乳がドロドロになり、乳管に詰まってしまうというもの。
一般的にに乳管は20個ほどあるとされており、そのうち5~10個ほど開通していれば良いのですが、3割ほどのママはうつ乳になってしまいます。
乳頭の形にも注意
また、扁平乳頭や陥没乳頭など、授乳しにくい特徴のあるママも、赤ちゃんが上手に母乳を飲めるようになるまでは乳腺炎にかかりやすいと言えます。
そして、卒乳や断乳の時期に授乳回数を減らしたり、急に授乳をやめるのも、乳腺炎を引き起こす原因になります。
乳腺炎の症状が悪化するママの特徴
一方、急性化膿性乳腺炎は産後2週間~2ヶ月ごろに多いと言われていますが、これは産後の疲労や寝不足、ストレスなどが蓄積してママの抵抗力が下がっているため、細菌に感染しやすい状態であることも関係あると見られます。
母乳育児中であればいつでもつまりやシコリは発生する
産後は疲れや睡眠不足でママの抵抗力が弱っている時もありますし、歯が生えてきた赤ちゃんに乳頭を噛まれて傷がつき、細菌に感染してしまうこともあるでしょう。
そのため授乳中ママは、うっ滞性乳腺炎、急性化膿性乳腺炎のどちらも、かかる可能性があります。
乳腺炎にかかりやすいママの特徴をまとめると、こうなります。
- 母乳量が安定しない
- 赤ちゃんが上手に吸えない
- もともと乳管が細く、つまりやすい
- ストレスをためやすい
- 疲れやすい
- 添い乳、同じ姿勢での授乳をよくする
- 授乳の回数が少ない、もしくは時間を決めて授乳している
- 授乳間隔があきすぎる
- 初産・断乳時
- 母乳の粘度が高い
- 乳房を締め付ける衣類を着用している
- 血行が悪い(冷え性・むくみ・便秘等)
細菌感染を防ぐコツ
乳腺がつまりやすいというのは体質的なものなので仕方ないのですが、
- 授乳の姿勢や回数などは日頃から気をつける。
- 授乳や搾乳する時に手を清潔にする。
- 母乳パッドの交換を怠らない。
このあたりは最低限、気をつけたいですね。
6.脂っこいものを食べても問題ない。乳腺炎と食事の関係について
- ケーキを食べたらしこりができた
- お餅を食べたら母乳が詰まった
- 焼き肉を食べた後に乳腺炎になった
といった経験をしているママは多いはず。そうした体験談はあちこちで聞かれます。私も、フライドチキンを食べた翌日に乳房にしこりができたことがありました。
しかし、実際には食べたもの症状には関連がなく、食べ物以外の授乳間隔や回数、姿勢、ママのストレスや疲れといったものが乳腺炎を引き起こしているのです。よくよく思い返してみると、特定の食べ物を食べたのと同じタイミングで、授乳間隔があいたり、いつもより疲れがたまってはいませんか?
母乳育児医学アカデミー(ABM)の臨床指針第4号 乳腺炎(2014年改訂版)には、乳腺炎の誘因のひとつについて、『母親のストレスや疲労(特定の食物がヒトにおける乳腺炎のリスクであるというエビデンスはない)』と書かれています。
また、ミルキー母乳育児相談室を開設している助産師・山川不二子さんの著書「ミルキーママの自分でできるおっぱいケア」(改定3版)には、乳腺炎はうつ乳が主な原因で起こるものであり、『ケーキなどが乳腺炎の原因のように言われるのはイメージの問題です。常識的な量を食べたくらいでは、まず影響ありません』
と書かれています。
以前は、乳腺炎の原因は食事にもあり、脂っぽいもの、甘いもの、カロリーの高いものを食べ過ぎると乳腺炎になりやすい、という説が有力でしたが、特定の食品を食べたからといって乳腺炎の原因になるわけではないようです。
疑似科学に振り回されず、美味しいものを食べてストレス解消
ケーキばかり食べてご飯を食べない、なんていうのは論外ですが、バランスの良い食事を心がけた上で、食べ過ぎない範囲でスイーツや揚げ物を楽しむことは、ママがストレスを溜めないというポイントにおいても大切なことです。
よい母乳をたくさん出すために、食事に気を配るのも良いですが、乳腺炎になるかも……と恐れて食べたいものを無理に我慢する必要はありません。
「〇〇を食べたから乳腺炎になる」というイメージにとらわれて、乳腺炎の真の原因を見落とさないようにしたいですね。
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ハーブティーは乳腺炎解消に効果あり
ハーブティーにはこのような効能があります。
- 母乳量を増やしつつ詰まりにくくする。(体を温めて血の巡りを良くし、血液をサラサラにする効果)
- 鉄分やビタミンCを含んで貧血予防にもなる
- 便秘やむくみを改善
このため、たんぽぽ茶やローズヒップティーなどのお茶は、乳腺炎トラブル対策に昔から世界中で愛飲されています。
妊娠中や授乳期に飲むハーブティーは、カフェインを含むコーヒーなどの代替品ではありません。
味もよく、さっと作れるようにティーバックに小分けにする等の工夫がされています。
7.乳腺炎の治療法って、どんなもの?
乳腺炎になりかけの場合
しこりや白斑があり、少し痛みがあるといった乳腺炎になりかけている状態では、助産師による授乳や搾乳についての指導、乳房マッサージなどを受けて、つまりを解消し、たまった母乳を外に出すことが一番の治療法になります。
乳房に腫れや痛み、発赤などがあり、炎症が起きていると考えられる場合は、乳房を冷やすことで炎症をしずめます。
しかし、ずっと冷やしっぱなしでは乳房も冷たくなり、授乳に影響を与えることもありますので、授乳の前には蒸しタオルなどで少し温めてください。
乳腺炎で高熱が出ている場合
高熱、乳房全体の腫れがあるような急性化膿性乳腺炎の場合は、消炎鎮痛剤や抗生物質を使用して治療します。
急性化膿性乳腺炎が悪化した場合は、乳房やその周辺に膿がたまりますので、それを排出するために外科的な処置や切開手術が行われます。
こちらは乳腺炎が悪化しはじめて高熱が出始めたときの対処法です。病院での治療が一番です。ムリはしないでください。
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8.乳腺炎の時は授乳してもいいの?
今と昔はやり方が違う
以前は、乳腺炎になった場合は授乳をストップするよう指導されましたが、現在では「乳腺炎でも授乳を続けることが、ママの回復と赤ちゃんの健康につながる」と考えられています。
こまめに赤ちゃんに飲んでもらい、たまった母乳を出すことが一番の治療になりますので、乳腺炎にかかっても積極的な授乳をすすめている医師や助産師も多くいます。
しこりや痛み、腫れなどのある患側の乳房から頻繁に授乳しましょう。
不味いおっぱいで赤ちゃんに嫌われないために
乳腺炎の時の母乳はいつもと味が違うことがあります。赤ちゃんが嫌がる場合は、少量搾乳後に赤ちゃんに飲んでもらいましょう。
赤ちゃんが十分に母乳を飲めていない場合は、授乳後の搾乳が有効です。
乳腺炎の重症度と授乳
急性化膿性乳腺炎でも、赤ちゃんに影響のない薬を使用してくれたり、切開して膿を出す治療をしても授乳できるよう配慮してくれたりする病院もあります。
うっ滞性乳腺炎、急性化膿性乳腺炎いずれの場合でも、大切なのは専門家の指示、指導のもとで授乳を進めていくことです。迷った時や不安な時は、自分だけで判断せず、必ず医師や助産師などに相談しましょう。
9.やっぱり病院に行かないと、ダメ?
自分はフラフラでろくに動けないのに、赤ちゃんは泣いているし、パパは帰ってこないし、こんな状態では病院にも行けません。
それでも、授乳だけはしなければと、意識が朦朧とする中で授乳しては激痛に泣き、美味しくない母乳を飲んで泣く赤ちゃんを見てまた泣き…初めて乳腺炎にかかった時は、ただでさえ慣れない育児の中で、自分の体調まで最悪になってしまったことで、これからどうなるんだろう、どうすればいいのだろう、と不安な気持ちだけが大きくなって、精神的にも辛い思いをしました。
乳腺炎かもしれないという疑いを持ちながらも、赤ちゃんが小さいから病院に連れて行けない、どうしよう…と悩んでいるママもいることでしょう。
軽いしこりや白斑があっても、今すぐに乳腺炎になってしまうとは限りませんから、痛みが弱い初期のうちに自分で適切な対処ができるようであれば、必ずしも病院へ行く必要はないと言えるかもしれません。
よくわからないなら産科へ
ただ、初めて乳腺炎のような症状が出て対処法がわからない場合や、熱が出ている場合は、電話でもいいので、必ず出産した病院に相談すべきです。
ネットや本などの知識だけで対処しようとすると、かえって症状を悪化させるかもしれません。また、自分で乳腺炎だと思っていても、実は違う病気だったりすることも。
乳腺を悪化させると切開手術に
乳腺炎は、甘く見ていたり、正しい対処法ができていないと悪化します。切開などの手術が必要になります。
その間はしばらくは授乳に制限が加わったり、今まで通りの授乳ができず不便を感じることがありますし、頻繁な通院も必要になります。
これでは赤ちゃんもママも、大変な思いをするはめになりますよね。ですから、乳腺炎を疑った時は自己判断せず、病院で正しい対処法を教えてもらうのが一番なのです。
我慢のし過ぎで乳腺炎を極端に悪化させてしまったママたちの体験談です。
コチラもチェック!
まだ余裕が有るうちに先手を!
これを読んでいるママは、母乳のトラブルや、乳腺炎の始まりのような症状を感じているでしょう。
「おかしいな」「いつもと違うな」と思ったら病院へ。もしくは電話で相談し、症状が軽いうちに適切な対処をしましょう。
快適でトラブルのない母乳育児のために、乳腺炎は悪化させずに治したいですね。
乳腺炎初期の不安を解消するリンクまとめ
参考資料
・母乳育児医学アカデミー(ABM) 臨床指針第4号 乳腺炎(2014年改訂版)・日本助産師会 乳腺炎ケアのフローチャート
http://www.midwife.or.jp/midwife/mastitis-flow.html・「ミルキーママの自分でできるおっぱいケア」(改定3版) 山川不二子・著/メディカ出版