乳腺炎は、ある日突然やってきます。
どんなに気をつけて授乳していても、ちょっとしたきっかけで乳腺炎にかかってしまうことはよくあります。
そして、その原因が思い当たらない、なぜ?! ということも多いもの。
乳腺炎の原因として知られる代表的なものと言えば、
- 乳腺が細く、つまりやすい
- 陥没乳頭、扁平乳頭
といったママの体質に関わるものや、
- 授乳間隔が長い、授乳回数が少ない
- 母乳は出ているのに赤ちゃんが上手く飲めない
などの授乳そのものの問題があげられますが、そのほかにも、思いもよらないところに乳腺炎のきっかけとなり得る原因が潜んでいるかもしれません。
ここでは、乳腺炎を引き起こしてしまうかもしれない6つの意外な原因とその対策について、詳しくお伝えしていきましょう。
見落としがちな乳腺炎の6つの原因と取るべき対策
1.きついブラジャーや補正下着
授乳中は、ホルモンの影響で乳房が今までより大きくなります。
そのため、垂れないようにとキツめのブラジャーをつけたり、サイズが合わないのに妊娠前のブラジャーをそのまま使ったりしていると、胸の周りが圧迫されてしまいます。
また、産後の体型を元に戻そうと補正下着をつけることで体が締め付けられたり、きついシートベルトを長時間装着していたりすることによって乳房が圧迫されると、血流が悪くなることがあります。
こうした下着やシートベルトでの締め付けが血行不良を招き、乳腺炎の原因になってしまうことがあります。
対策
体型が気になっても、乳腺炎のリスクを上げるわけにはいきません。母乳育児中は下着や洋服での締め付けをなるべく少なくして、全身の血行をよくしましょう。
ブラジャーはワイヤーの入っていないものや、授乳しやすいカップ付きのキャミソールなどを活用することをオススメします。
車で移動する時は、シートベルトで胸の周りが締め付けられないように調節したり、長時間のドライブではこまめに休憩を挟んでシートベルトを外すことが必要でしょう。
2.肩こり
妊娠前から肩こりがひどいというママは、赤ちゃんの育児をしているうちに、肩こりが余計に悪化することがあります。
肩こりの原因とひとつとして血行不良があげられますが、血行が良くないということは、乳房の基底部と呼ばれる部分の血液の流れを滞らせることにもつながり、母乳の分泌に影響を与えたり、乳房のトラブルを招いたりすることとも無関係ではないと考えられます。
「肩こりがひどいから乳腺炎になる」というよりは「肩こりに悩まされているママは乳腺炎になる可能性が高い」と言えるかもしれませんね。
対策
マッサージやストレッチなどを積極的に行って全身の血液循環を良くし、少しでも肩こりを解消できるように心がけましょう。
筋肉の疲労を軽減すると言われる、ビタミンB群を食事で積極的に摂取するのもオススメ。
また、赤ちゃんを抱っこしすぎて肩に負担をかけないように、スイングチェア、バウンサーなども利用するのも効果的です。
少しくらい赤ちゃんが泣いていても、声をかけたりあやしたりして抱っこせずにやり過ごすのも、たまには良いでしょう。
3.疲労とストレス
慣れない育児で心身ともに疲れ、ストレスがたまっていると、全身の血行が悪くなり、母乳や乳房のトラブルを引き起こす原因を作ってしまいます。
また、疲労やストレスがたまっている状態は免疫力を低下させ、細菌などに感染しやすい状態を作ってしまうため、感染性の乳腺炎のリスクが高まるでしょう。
対策
疲労とストレスを軽減するためには、とにかく体を休めることが一番。
睡眠不足になりがちな育児中ですが、家事はほどほどにして赤ちゃんとお昼寝したりゴロゴロしたりして、体力を温存しましょう。
精神的なストレス解消には、数十分でもいいので1人でいられる時間を確保することも有効です。たまにはパパに赤ちゃんを見ていてもらって出かけたり、好きなものを食べたりしてリラックスする時間を作りましょう。
1人で育児を抱え込んだり我慢したりせず、周囲にサポートを求めてママ自身の心と体を休めることは、とても大切なことです。
4.授乳時の抱き方が偏っている、姿勢がよくない
いつも同じ抱き方で授乳していたり、左右どちらか一方の乳房からよく母乳を飲ませていたりすると、赤ちゃんがあまり飲まない方の乳房の乳腺が詰まりやすくなります。
また、偏った抱き方や良くない姿勢での授乳、添い乳は血行不良や赤ちゃんの飲み残しを招き、肩こりなどを引き起こすとともに、母乳のつまりやしこり、乳腺炎の原因になることがあります。
対策
授乳する時は、赤ちゃんを横抱きしたり縦抱きしたりして、いろいろな方向・角度から母乳を飲んでもらいます。右側の乳房から授乳したら、次の授乳は左側からなど、左右の乳房から均等に授乳できるように心がけましょう。
また、赤ちゃんを抱っこする時に猫背になりすぎたり、肩や腰などに変に力が入ったりしないよう、授乳時の姿勢を見直すことも必要です。
添い乳は楽ですが、乳腺炎の予防という観点からは頻繁に行うことはオススメできません。夜の授乳もなるべく体を起こして行うか、添い乳でも左右の乳房からまんべんなく赤ちゃんに飲んでもらえるような工夫をしてみましょう。
5.搾乳器が上手く使えない
授乳間隔がまだ定まっていない場合や、赤ちゃんが思うように母乳を飲んでくれない場合は、乳房が張ってしまうために搾乳しなければなりません。
その際、正しく搾乳器を使えれば問題ありませんが、痛みを感じるほど強すぎる力で搾乳したり、長時間搾乳していたりすると、乳腺組織を痛め、トラブルを発生させる原因になります。
また、必要以上に搾乳器を頻繁に使っていると、その分母乳が多く生産されてしまい、ますます乳房の張りがひどくなるケースもあります。
対策
搾乳器を使う時は、医師や助産師など、専門家の指導やアドバイスを求めるのがオススメです。
強い吸引力で搾乳すればたくさん母乳が出るとは限りませんので、自分に合った力加減で、コツをつかんで搾乳できるようにしてみましょう。
スッキリするまで搾乳するのではなく、軽く圧を抜く程度に搾乳するように心がけ、余分な母乳を作らないことも大切です。そして、搾乳する時には必ず手や搾乳器を清潔にすることも忘れずに。
6.間違った自己流の母乳マッサージ
母乳をもっと出したいという思いや、つまりやしこりがあるという理由から、自己流で乳房マッサージをしているママも多いかもしれません。
しかし、力任せに揉む、しごくなど、マッサージの方法が正しくない場合には、誤って乳腺を傷つけてしまう恐れもあります。そうすると乳房のトラブルはますます悪化し、本格的な乳腺炎になってしまう可能性があります。
また、化膿性乳腺炎など、乳房にひどい炎症が起きている状態で自己流のマッサージをして乳房に余計な刺激を与えると、かえって症状を悪化させる原因になることも。
対策
マッサージの方法はさまざまな本やサイトに掲載されていますが、一番安心で確実なのは、医師または助産師から直接指導を受けることです。
また、マッサージが有効な場合とそうでない場合がありますので、迷った時は自己判断せずに専門家に相談することをオススメします。
乳腺炎の原因となるのは、もともとの体質や授乳間隔・回数だけではありません。
さまざまな原因によって血行が悪くなったり、搾乳器の使い方やマッサージの方法を間違ってしまったりすることでも、乳腺炎のリスクが高くなってしまいます。
こうした原因を取り除いて乳腺炎を予防し、快適な母乳育児ライフを送れるようにしましょう!
参考資料
・母乳育児医学アカデミー(ABM) 臨床指針第4号 乳腺炎(2014年改訂版):http://www.jalc-net.jp/dl/ABM_4_2014.pdf
・搾乳のコツ│搾乳器の使い方│Medela:http://www.medela.jp/breastfeeding/advice/pumping/useful-tips
・「ミルキーママの自分でできるおっぱいケア」(改定3版) 山川不二子・著/メディカ出版