
幼稚園と保育園以外に認定こども園という施設が存在するのをご存知でしょうか。
積極的に認定こども園の数を増やしている自治体もありますし、地域事情を考えながら設置を慎重に検討している自治体もあります。
待機児童対策として打ち出され、期待されている認定こども園について調べてみました。
認定こども園とは?
名前から子どもに関する施設だ、と想像できますよね。この施設は幼稚園と保育園を足して2で割ったような施設です。
教育・保育を一体的に行う施設で、いわば幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持っている施設です。
内閣府/認定こども園:http://www8.cao.go.jp/shoushi/kodomoen/
幼稚園とは、文部科学省が管轄する「学校」の一部です。「学校教育を受けるために通わせるところ」と言うと解りやすいでしょうか。
一方、保育園は厚生労働省が管轄する「日中、親が保育できない子どもを預かる児童福祉施設」です。
幼稚園は「教育を受けさせたいと思った人が利用できる」施設であって、保育園は「就労や通院などで保育できない理由を持つ人が利用する施設」となります。
認定こども園は、両方の良さを持っている施設、つまり「誰でも利用できる施設であって、保育も教育も受けさせられる施設である」と言えます。
さらに認定こども園には「認定」という言葉が付いていますよね。これは、国が定めた基準に従ったり、国の基準を参考にして都道府県などが認定した施設という意味です。いわゆる認可外の園と違い、施設についても保育者・教諭についても国が定めた一定基準を満たしている施設と言えますね。
認定こども園にも種類がある
認定こども園にも色々種類があります。これは、経営母体がどういうものか、によって異なります。
幼稚園的機能と保育所的機能の両方の機能をあわせ持つ単一の施設として、認定こども園としての機能を果たすタイプ。幼稚園型
認可幼稚園が、保育が必要な子どものための保育時間を確保するなど、保育所的な機能を備えて認定こども園としての機能を果たすタイプ
保育所型
認可保育所が、保育が必要な子ども以外の子どもも受け入れるなど、幼稚園的な機能を備えることで認定こども園としての機能を果たすタイプ
地方裁量型
幼稚園・保育所いずれの認可もない地域の教育・保育施設が、認定こども園として必要な機能を果たすタイプ
こうして見ると認定こども園としてゼロから施設を作ることもできますし、既に存在する幼稚園や保育園を認定こども園に変えることもできます。さらに、認可外の園が認定こども園として認定を受けることもできますね。
待機児童が増加し、多くの子どもが保育園の入園を待っている今、幼稚園が保育機能を持って認定こども園に変わることは待機児童解消のひとつの方法となるでしょう。
また、実態が解りにくく子どもに関するトラブルが多く発生している認可外保育園が自治体の認定を受けて、認定こども園になることも大きな意義があると言っていいでしょう。
認定こども園は増えている
認定こども園の数は年々増えています。

http://www8.cao.go.jp/shoushi/kodomoen/pdf/ensuu.pdf
やはり、待機児童数が多いこと、社会的な関心が大きいことが要因と言えるでしょう。しかし、自治体別に見ると認定こども園の数は非常に偏りがあります。各都道府県の認定こども園の数を単純に比較してみましょう(平成28年4月1日時点の数)。

http://www8.cao.go.jp/shoushi/kodomoen/pdf/ensuu.pdf
活用できる土地、人口、待機児童数などによって必要な施設が異なりますから、一概に多少を比較することはできません。しかし、大阪や兵庫が300か所以上と、圧倒的に多いと言えます。
なお、認定数が少ない県を列挙すると、三重は17か所(前年8か所)、沖縄20か所(前年5か所)、香川23か所(前年13か所)です。地域によって大きな差があると言えますね。ただ、どの県も前年よりも設置数は増えています。今後も当面は増加していく可能性がありますね。
認定こども園のメリットは?
認定こども園のメリットをあげてみましょう。内閣府は次の4点をメリットとして上げています。
保護者が働いている・いないにかかわらず利用可能。
集団活動・異年齢交流に大切な子ども集団を保ち、すこやかな育ちを支援。
待機児童を解消するため、既存の幼稚園などを活用。
充実した地域子育て支援事業で、子育て家庭を支援。内閣府/認定こども園:http://www8.cao.go.jp/shoushi/kodomoen/
これ以外にも、認可外の施設が「認定こども園」になることで「利用者が劣悪な環境の施設を回避できる」というメリットがあります。
認可外に預けたくない。預けているけれど不安が強い。そんな人にとっては「都道府県などの認定を受けた施設」が増えると、一定の基準をクリアした誰でも預けられる施設が増えることになり、悲しい事故が減る可能性が高まると言えるでしょう。
認定こども園のデメリットは?
・利用料が上がる可能性
・認定こども園は誰でも預けられるが、必ずしも望む時間預けられる訳ではない
・待機児童の受け入れ先になる訳ではない
まず、利用料・保育料は自治体が決めます。このため、認定こども園に変わった幼稚園や保育園では「これまでの利用料(保育料)と異なる金額になる」可能性があります。
また、認定こども園には「幼稚園の時間」と「保育時間」があります。幼稚園の時間は大体9時~14時くらいで、この前後の時間帯が「保育時間」になります。認定こども園に通う全員が「保育時間」を利用できるわけではありません。
「保育の理由」がない場合は「幼稚園の時間だけの利用」になります。理由があって「保育時間」を利用する場合は、自治体やその施設が定めたルールに従って追加料金を負担するといった必要がでてきます。
こうしたことから「認定こども園が必ず待機児童を減少させる」とは言い難いですね。
認定こども園の保育料はいくら?
やはり気になるのは認定こども園の利用料ですよね。これは自治体が決めることで、一律料金ではありません。
国が一定の基準額を示していて、それを参考として自治体が金額を決めています。自治体は財政事情などを考えつつ、各家庭に見合った負担額になるよう調整しています。一例として神戸市の利用額を例に挙げてみましょう。

http://www.city.kobe.lg.jp/child/grow/shinseido/index03_03.html
これを見ると、利用料金は何種類もあり、利用者の状況によって大きく異なることが解ります。生活保護世帯か、世帯収入はどれくらいか。様々な条件によって額が変わります。
階層区分という考え方
表を見ると「階層区分」というのがありますね。A階層~D階層まであり、さらにD階層が6区分に分けられています。
生活保護を受けている世帯はA階層になり、負担額は0円です。そしてB階層は市民税が非課税の世帯です。C階層とD階層は市民税が課税されている世帯で、それぞれ収入によって階層や区分が異なります。
自分がどの区分に属するのか。それは「所得割課税額」で決まります。この「所得割課税額」は、収入が多い人ほど高くなります。前年度の収入額を元に算出される税で、毎年5~6月頃に通知書が届くと思います。
お手元に住民税の通知書を準備してください。そこに「所得割課税額」という欄があります。
夫婦共働きの場合はパパとママの両方の額を確認し、それを足した額を計算しましょう。所得割課税額を確認したら、自分がどこの階層のどの区分に該当するか解ります。
認定こども園の保育料が高くなるってどういうこと?
通っている園が認定こども園になると、保育料が高くなるから困る! という話を聞いたことがあるかもしれません。これは次のような時に起こる現象です。
- 幼稚園が認定こども園に変わる時の在園児の負担額
- 認可外保育園が認定こども園に変わる時の在園児の負担額
- すでにある園が認定こども園に変わる時に利用料金の算定方法が変更される
幼稚園や認可外保育園に子どもが通っている世帯に対し、保育料金を助成する制度を設けている自治体があります。もし、通っている幼稚園や認可外保育園が認定こども園になった場合、この助成金をもらえなくなります。
例えば、一か月の保育料金が6万円の認可外保育園に預けている世帯が3万円の助成金をもらっていたとします。この場合、負担額は3万円です。
もし、認可外保育園が認定こども園になって一か月の保育料金が3.5万円になったらどうでしょう。助成金をもらえなくなりますから、負担額が3.5万円に増えます。
さらに、既に存在する園が認定こども園になると利用者の負担額の算定方法は自治体が決めたルールに変わります。このため、利用者の中には負担額が増える人が出る可能性があります。
こうしたことから、既に存在して在園児がいる園が認定こども園に変わる時に反対の声が上がるケースがあります。
兄弟割引があるって本当?
認定こども園の保育料金は自治体が決めますので、自治体によって内容が異なります。このため、必ず「ある」とは言えませんが「兄弟割引」があるケースも見られます。
さっきの神戸にある認定こども園の利用者負担額の表を見てみましょう。そこには「第1子」「第2子」「第3子以降」とありますね。
これは子どもが多い世帯の負担額を抑える行政の配慮と言えます。少子化問題の解決策のひとつでもあり、安心して子どもを生み育てられる環境作りの一環と言えるでしょう。
認可保育園で多くみられるこうした措置が認定こども園でも見られます。第2子は半額、第3子は無料というケースが多いようです。
知っておきたい支給認定
認定こども園は誰でも利用が可能と言ってきました。しかし、実は自治体から「あなたは利用資格があります」という認定を受けてからでなければ利用できません。
誰でも利用できるはずなのに、どうして認定されないと利用できないのか。ちょっと疑問かもしれませんが「施設型給付費・地域型保育給付費等支給認定申請書」というものを書いて認定を受けなければ、認定こども園は利用できません。
これはどちらかといえば、行政と施設の都合と言っていいでしょう。平成27年4月から「子ども・子育て支援新制度」が施行されました。これまでバラバラに管理されてきた幼稚園や保育園、認定こども園が、この制度の元で自治体が一括管理できるようになったのです。
この制度のもと、幼稚園や保育園、認定こども園は財政支援を自治体から受けることができます。「うちの園は、これだけの設備を持ち、こうしたプログラムで、XX人の子どもを預かっています。だからこれだけの額を支援してね」と園が自治体に財政支援を要求します。
自治体としては正しく財政支援するために「不正な請求をしていないか」「不要なサービスを提供していないか」「園を利用する必要がある人にサービスを提供しているか」などをチェックする必要があります。
このチェックの一環として「財政支援を受ける設備を利用する資格がある人」を認定するのです。その認定作業に「施設型給付費・地域型保育給付費等支給認定申請書」というものがあり、幼稚園や保育園、認定こども園を利用したい、と希望する人は、この申請書を書いて自治体に提出し、どの施設を利用できる人なのか、認定を受けます。
認定には3種類あります。
- 1号認定:満3歳以上/幼稚園や認定こども園が利用可能
- 2号認定:満3歳以上/保育園や認定こども園が利用可能(保育の必要がある)
- 3号認定:満3歳未満/保育園や認定こども園、家庭的保育事業所など(保育の必要がある)
この認定のことを支給認定と言います。この認定を受けて初めて、幼稚園や保育園、認定こども園の入園審査を受けることができます。
認定こども園は幼稚園と保育園のいいところを合わせ持った施設で、国が定めた一定基準やそれに準ずる基準をクリアしていると自治体が認定した施設です。こうした施設の増加は、待機児童や劣悪な保育環境の認可外保育園の減少に繋がる可能性があります。
ただ、全ての人が自由に利用できる訳ではなく、また必ず待機児童の受け皿になる訳でもありません。自治体も需要と供給のバランスを見ながら設置していますので、私達も自分にとってどんなメリットやデメリットがあるのか考えながら利用したいですね。