妊娠中に、貧血になってしまう女性は多いもの。妊婦さんのうち、実に30~40%は貧血に悩まされているとも言われています。
この記事を読んでいる方の中にも、奥様が妊娠中に貧血と診断された方もいらっしゃるでしょう。
男性にとって貧血はあまりなじみがなく、どんなものか想像がつかないかもしれません。もしかすると、
- 「貧血貧血って言うけど、そんなにひどいの?」
- 「妊娠したらみんな貧血になるんでしょ? 大げさなんじゃない?」
なんて思っていませんか?
しかし、貧血がひどくなるとさまざまな症状に悩まされ、時には具合が悪くて動けなくなることもあるのです。
今回は、貧血というものがどんなものか想像できないという男性のために、第一子を妊娠中に貧血と診断された私の体験をお話しようと思います。
これを読んで、少しでも貧血に悩む妊婦さんの辛さを理解してもらえれば幸いです。
動悸、息切れ、耳鳴りに悩まされる毎日
その時のヘモグロビン値は9.7g/dL。
貧血と診断される基準の11g/dLをやや下回っていましたので、鉄剤も処方されました。
診断されるまで、私はほぼ毎日のように頭痛や耳鳴り、動悸、息切れといった症状に悩まされていたため、ヘモグロビンの数値を知った時は「ああ、やっぱり」と思いました。
このヘモグロビン値だけを見れば、それほど重度の貧血というわけではありません。妊娠中もこれくらいの貧血になる女性は多くいます。しかし、重度ではなくてもやはり貧血の症状は辛いものです。
貧血をよく知らない男性にとって、貧血の症状といえば突然のふらつきや立ちくらみが思い浮かぶかもしれませんが、そのようなものばかりではありません。
- まず、ちょっと動いただけで心臓がドキドキして息が苦しくなるので、長時間動いていたり立っていたりすることができません。
- 料理するにしても、10分台所に立ってはソファで横になり、また10分立っては横になり、のくり返し。
- また、座って本を読んでいたりパソコンを見ていたりするだけでも、耳鳴りがして、頭がぼーっとしてきます。
- 何度もあくびが出たり、吐き気がしてきたり、目の前がチカチカしてきたりするので、またすぐに横になってしまいます。
- 横になれば症状は一旦おさまりますが、立ち歩けばまたすぐに同じ状態になってしまいます。
一日中こんな調子なので、家事や買い物などもままならず、最低限の事だけを何とかこなして、あとはひたすら横になるという生活をしていました。
外出先で急激に襲ってきた貧血の症状
ある日、いつもより体調が良かったこともあり、鉄剤も飲んでいるんだから大丈夫だろうという軽い気持ちで、夫と近所のショッピングセンターに買い物に行きました。
赤ちゃんに必要なグッズを見ておきたかったのもありますが、具合が悪くて家にこもっていることが多く、気が滅入っていたため、ストレス解消の意味も兼ねての久しぶりの外出でした。
最初のうちは調子もよく、きちんと休憩もしながら楽しく買い物をしていたのですが、しばらくすると、次第に耳鳴りや、耳の中が詰まるような感じがしてきました。そして、何となく吐き気がして、眠くもないのに何度もあくびが出てきます。
「あ、これはちょっとまずいかも」
と自分で自覚できたので、夫にどこかに座りたいと訴えて、とりあえず近くにあったベンチに腰掛けました。座ればいつものようにこの症状も落ち着くだろうと思っていたのですが、この日に限っては、症状が落ち着くどころかどんどんひどくなっていきます。
- 耳の中がぼわぼわとして、まるで水の中に入った時のように周りの音が遠のき、隣にいるはずの夫の声もよく聞こえません。
- 目の前もチカチカして、光る星が飛び交っているように見えます。
- だんだんと視界が狭くなっていき、まるで昔の映りが悪い白黒テレビを見ているようです。
- 手足はしびれて感覚がなくなり、冷や汗が大量に出てきました。
その時の夫の様子は、私自身はよく覚えていないのですが、慌てて飲み物を買ってこようとしたか、店員さんを呼んでこようとしたかで、ちょっと離れたのだと思います。私は体に力が入らず、座っていられなくて体を横に倒したところで、すうっと意識が遠のく感覚に陥りました。
もしも意識を失って倒れていたら……
どれくらいそうしていたのかはわかりませんが、だんだんと視界や周りの声が元に戻ってきて、ぼーっとしながらも夫が私の名前を呼んでいるのがわかりました。そして、店員さんが車いすを持ってきてくれて、「大丈夫ですか?!」と声をかけてくれたのに対して、「ああ…はい、大丈夫です」とか何とか答えた記憶があります。
その後間もなく、ぼーっとしながらも体を起こせる状態になったので、結局車いすに乗せられて夫に車まで運んでもらったのですが、その後もしばらく体が重く、ひどい倦怠感がなかなか抜けませんでした。
私の場合は、バタッと倒れたのではなく、自分で「ああ、これはヤバイかも……」と自覚して体を横にすることができたのでよかったのですが、これがもしも、突然前方に倒れてお腹を打ったり、後ろに倒れて頭を打ったりしていたらと考えると、今でもとても恐ろしくなります。
それと同時に、人前で倒れかけ、夫に心配をかけてしまった、店員さんにも迷惑をかけてしまった、というこの体験を通して、私自身貧血を改善するためにもっと真剣にならなくてはいけないなと気持ちをあらたにしたとともに、それまで貧血のひの字も知らなかった夫も「貧血ってこんなに大変なんだ……」と実感したようで、夫婦にとっての教訓となりました。
貧血の症状は、普段から辛いものですが、今は大したことがなくても、そして直前まで何ともなくても、急激にひどくなり、倒れてしまうこともあります。
たかが貧血、妊娠中は誰でもなるもの、と軽く考えずに、奥様がいまどんな体調なのかをしっかりと理解してください。
そして、貧血で起こるさまざまな症状やその辛さを想像してあげるとともに、外出にはなるべく付き添う、辛そうな時は家事を積極的にするなど、しっかりとサポートしてあげてくださいね。