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イクボスが評価される時代の到来|仕事だけで良いと考える男は会社から無能の烙印を押される

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男性の育児参加がすすめられている今でも、実際に育児休暇や時短勤務制度を使い、育児に積極的に関わる男性は、まだ少ないのが現状です。こうした制度を使いたくても、上司がいい顔をしないため、誰も使えないままになっている会社もあることでしょう。

しかし、そんな育児に理解のない上司は、今後、無能の烙印を押されてしまうかもしれません。

時代が求めているのは、育児の大変さを理解し、周囲に適切なフォローができる上司。こうした上司を「イクボス」などとも呼んでいますが、今、なぜイクボスが評価される傾向にあるのでしょうか?

少子化、共働き家庭の増加、育児負担の増加など、日本が抱えるさまざまな問題と、働きやすい環境を作るリーダー・イクボスとの関係を考えてみました。


このままでは国の危機?! 少子化がもたらす課題

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日本が少子高齢化の道を辿っているのは、もはや誰もが知る事実。15歳~64歳の労働に適した人口は平成7年をピークに減少し、国力の低下が危惧されるようになってきました。そこで、政府としても労働力を増やすため、女性が働き続けられる社会を構築しようとしています。

しかし、実際に働く女性は増えていますが、その弊害として少子化が加速しているとも言われています。働く女性が増えれば、それだけ晩婚化が進み、晩婚化の影響として少子化も進みます。結婚年齢が上がれば、子供を複数持つという選択肢も狭まり、必然的に子供の数は減っていくと考えられます。

それでなくても、現代は子育てに大きな労力と費用がかかると言われる時代。しかも、小さな子供を抱えて働く女性を取り巻く環境はまだまだ厳しく、キャリアか子供かの選択を迫られることも多くあります。

子供を持つことはリスクとまで考えられている中、このままの状態では、どんどん少子化が進み、労働人口は減少し、経済は縮小して、日本という国が立ちいかなくなることは想像に難くないでしょう。

少子化を打破し労働力を確保するために女性も働く時代

先日決定された2020年までの少子化対策の指針となる「少子化社会対策大綱」では、少子化を「社会経済の根幹を揺るがしかねない危機的な状況」と指摘しています。

少子化は、深刻な国力の低下に直結します。そのため、女性が働きつつも子育てをしやすい社会を作るよう、国も本腰を入れて動き出しました。一昔前のように、男が外で働き、女は家庭を守るのではなく、夫婦共働きを前提とした上で子供を増やすしか、道は残されていないのです。

実際に、共働き世帯は増加していると言えます。平成22年の国勢調査では、共働きの家庭が1200万世帯を突破していますし、女性の労働力率はどの年齢層でも増加しています。
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こうした社会の変化を考えれば、働きながら育児をする女性は今以上に増えることが予想されます。それと同時に、男性もさらに育児に積極的に、主体的に関わることが求められていくでしょう。

そんな中で、育児の大変さが全くわからず、妊娠や出産を迷惑なものとして捉える男性上司は、次第に淘汰されていくのではないかと考えられます。

育児に理解のない上司は会社をダメにする?

たとえば、あるママが産休と育休を経て会社に復帰したとしましょう。

小さな子供は、保育園に通い出すと必ず体調を崩します。復帰後の1~2ヶ月は、子供の体調不良を理由に休むことが増えるのは、自分が実際に育児を経験してきた男性ならば理解できることですよね。

もちろん、復帰直後だけでなく、子供は突然体調を崩したり、怪我をしたりすることはしょっちゅうです。核家族で育児をしていて、保育園のほかに預け先がない場合、子供が体調を崩せばパパかママが仕事を休まざるを得なくなります。

しかし、これが理解できない上司は、

  • 「子どもと仕事とどちらが大切なんだ」
  • 「これだから子持ちは……」
  • 「お前だけ休むのか」

などと考えてしまいがち。この考えが、パワーハラスメント、あるいはマタニティハラスメントを生み出し、他の女性社員の職場復帰をも妨げる要因となる可能性があります。

こうした態度とともに問題なのが、子育てに理解がないため、部下が急に休むかもしれないという想定ができないこと。そのため、想定外の欠員が出た時に、とっさにフォローできず、部下全体の負担を大きくしてしまうのです。

足を引っ張り合い制度を使えなくする雰囲気に

また、国では、男性の育児休暇取得を促しています。先に上げた少子化社会対策大綱においても、妻が出産した直後の男性の休暇取得率を80%とする目標が定められました。

合わせて、男性の育児の関わる休暇を妨げる要因のひとつであるパタニティハラスメントを防止するため、企業への指導を徹底するとされています。こうしたことから、現在では低い男性の育児休暇取得も、今後は増えることが予想されます。

もしも、パパが育児休暇を取得したいと言った時、子育てに理解のない上司が

「子育ては女の仕事だろう!」

なんて言い出したら、どうなるでしょうか?

パタハラとも取られかねないこうした発言には、周りの部下もうんざりしてしまいますよね。他に育児休暇を取りたいと考えている男性社員がいたとしても、こんなパタハラ発言でそれをあきらめてしまうかもしれません。これでは、男性も主体的に育児をしながら働き、ママを支えることは難しくなります。

休まざるを得ない部下の気持ちにこれっぽっちも配慮できず、フォローもできない、法律で認められている制度を使うにもいい顔をしない、そんな上司の元で働きたいと思えるパパやママがいるでしょうか?

負の連鎖を作り出す無能な上司

子育てから逃げることはできません。子供との時間を確保しながら働くためには、もっと条件のいい会社を探したい、現役のパパやママがそう思うのは当たり前です。そうなれば、労働力が減少する現代、子育てしやすい会社に労働力が流れていくのは自然なこと。

また、どんなに育児に関わる制度が整っても、それを気持よく利用することができない、まして上司に罵倒され、制度を使うことがまるで悪いことだと言わんばかりの態度を取られるようなことがあれば、その制度を利用する人はいなくなってしまうでしょう。そうなれば、労働環境は劣化し、マンパワーが減少するのは当たり前です。

育児に理解がない上司がいるばかりに、貴重な労働力を失い、会社はますます労働力不足になるという悪循環に陥りる可能性もあるのです。

今後求められるのは、理解ある「イクボス」

女性だけでなく、男性も育児をしながら働くことを前提とするのであれば、上司自身が育児を経験していることが最も望ましいと言えます。自ら育児を経験し、育児中のパパやママが働きやすい環境をととのえてくれる上司、いわゆるイクボスが、今後は求められるのではないでしょうか。

育児を通して共感力が鍛えられている

育児の大変さを身をもって経験している男性上司は、気遣いや共感力にも長けています。それは、子供ができる前とできてからの両方の状況を、どちらも体験しているからではないかと考えられます。

こうした体験の幅は、今現在、育児をしながら働いているパパやママだけでなく、子供のいない部下の気持ちや状況も理解し、両者を適切にフォローができるという強みになります。

育児を経験することで周囲との橋渡しが可能に

子供の急病が理由で早退や欠勤する場合、どうしても独身者や既婚でもまだ子供がいない立場の人に負担が回ります。そのため、子育て世代の多い職場では何かと不公平感が募りがち。一方で、頻繁に休まなければならない状況になったパパやママは、申し訳ないという気持ちと、周りから責められるのではないかという不安に駆られます。

しかし、子育てに理解を示す上司であれば、どちらの状況や気持ちにも寄り添うことができます。子育て世代が休みを取ることは、仕事をする上ではリスクになりますが、そのリスクをきちんと理解しているからこそ、適切で迅速なフォローができます。
そして反対に、負担が大きくなりがちな立場の部下の気持ちも理解できる分、負担を集中させない工夫をすることもできるでしょう。

そんな上司がいれば、育児をしている人もしていない人も「この人の下で働きたい!」と思うもの。それが仕事のモチベーションアップにもつながります。

育児を経験した上司だからこその魅力とは

私の職場にも、このイクボスがいます。

私が働いているのは、とある小さな事業所ですが、ここにいる男性上司は育児経験を持っているため、子育てに非常に理解を示してくれます。

職場には小さな子供を抱えるママも多く、中には子供の体が弱くて頻繁に休まざるを得ない人もいます。

急な早退や休みを取られると、現場では人員が不足し、てんてこ舞いなのですが、上司は嫌な顔ひとつせず、自ら率先してフォローしてくれるため、私たちも「みんなでカバーしよう」という気持ちになります。みんなでカバーしあうからこそ、職場に一体感が生まれますし、休んだ人も肩身の狭い思いをせず、他の人が休んだ時は、自分が休んだ分までカバーしようと頑張ってくれます。

また、その男性上司は、自分の子どもの急病や学校行事などで休暇を取ることがあります。上司がそのように休暇を取ると、部下である私たちも、休みを取ることに対して罪悪感が少なくなります。

どちらの下で働きたい?

実は、以前の上司はこうした休暇を使うことに、いい顔をしない人でした。

有給や育児休暇だけでなく、忌引なども、決められた日数を使うことがまるで悪いことであるかのように振る舞っていたため、私たちは休みを取る時にいつもビクビクしていたのです。

しかし、理解のある上司に変わったことから、こうした心配がなくなり、のびのびと働けるようになったと感じています。

もちろん、子供がいるのだから休んで当然、などとは誰も思いません。融通をきかせて、後ろめたさを感じさせずに休ませてくれる、そしてしっかりフォローしてくれる上司がいるからこそ、休んだ分まで頑張って仕事をしようと考え、それが実際の成績にもつながっています。

ちなみに、この男性上司には今度3人目の子供が生まれるそうで、その際は育児休暇を取得する予定なのだとか。自分が育休を取れば、他の男性社員も育休を取りやすくなる。そう考えて、上司はあえて前例のない、男性の育児休暇取得を実現しようとしています。

私の職場では、この上司がよいモデルケースとなり、育児に理解のある職場をみんなで作り上げている、と言えるかもしれません。

イクボスが増えれば社会全体がよくなる

男性の育休はキャリアに響くという考え方は、もう時代遅れです。

実際に育児休暇を取得した男性からは、

  • 仕事に対する視点が広がって、仕事が楽しいと思えるようになった
  • 時間を効率よく使い、業務に集中できるようになった
  • 時間の管理や優先順位を付けて仕事をこなすことが上手くなった
  • 育休を取っていたことで取引時の方に興味を持ってもらいやすい

と、プラスの感想も多く寄せられているといいます。キャリアにマイナスどころか、仕事の効率が上がったと答えている人が多いのが興味深いところです。

男性が積極的に育児休暇を取ることはまだまだ難しいのが現状ですし、課題も山積しています。

しかし、一方では、企業にとっての新しいキャリアモデルとして期待されたり、後に続いて育休を取得する男性が増え、環境整備につながったりするケースも、確実に増えているのです。時代の流れを考えれば、男性の育休取得はキャリアに響くどころか、新しい働き方を切り拓き、ひいては社会全体を変えていく方法になると考えられます。

最近では、育児に理解のある上司、イクボスを積極的に育成しようという企業も増えています。

  • 管理職に育児への理解がなく、育児休暇や時短勤務の制度を使うことがはばかられるような職場からは、優秀な人材はどんどん流出していきます。
  • 育児支援をするなら、育児に理解のあるイクボスとなること、それが、誰もが働きやすい職場環境作りと、労働率のアップをもたらします。

つまり、自らがイクボスとなることは、会社へ貢献することにつながるのです。

イクボスが増えることは、それぞれの会社がよくなるということ。それぞれの会社がよくなれば、育児をしながら働こうという人が増え、ひいては出生率のアップや国力の増強にもつながっていくかもしれません。

これからの社会においてイクボスが求められ、評価されるのは、当然の流れと言えるでしょう。

参考
・内閣府男女共同参加局:共働き等世帯数の推移
http://www.gender.go.jp/whitepaper/h24/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-03-17.html
・内閣府:少子化社会対策大綱

クリックしてshoushika_taikou2_g.pdfにアクセス

・厚生労働省:平成25年国民生活基礎調査の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/
・総務省:平成22年国勢調査
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/kihon2/pdf/gaiyou.pdf

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