自分の中から一人の人間が出てくるのですから、痛くて当然ですよね。プレママの中には、出産の痛みが恐怖で仕方ないという人もいるのではないでしょうか。
この出産の痛みを軽減するための分娩方法として「無痛分娩」があります。麻酔を使って痛みを和らげ、スムーズに出産するためのひとつの方法なのですが、これに反対する男性もいるようです。
無痛分娩とはどんなもの?
無痛分娩とは、麻酔によって陣痛の痛みを緩和する出産方法です。
主なものは「硬膜外麻酔」といって、背中の脊髄に近い部分から局所麻酔薬を入れて、痛みを伝える神経をブロックする方法です。
陣痛が始まり、子宮口が4~5cmに開いた時点で麻酔を始めるので、全く痛みがないというわけではありません。また、人によって麻酔の効き具合が違ったり、麻酔を打つタイミングがズレたりすることもあるため、同じ無痛分娩でも「全く痛くなかった」「すごく痛かった」など、感想はさまざまです。
無痛分娩のメリットデメリット
それでは、無痛分娩のメリットとデメリットをあげていきましょう。
無痛分娩のメリット
- 痛みが緩和されるので、落ち着いてお産に臨める
- 痛みに弱い人、緊張しやすい人の不安を軽減する
- 麻酔薬が血圧を下げるため、妊娠高血圧症候群などがある場合に安心
- 体力を消耗しないため、産後の回復が早い
- 痛みが軽いため、ママの呼吸が乱れず、赤ちゃんへ酸素が十分に供給される
- 赤ちゃんが誕生する瞬間を冷静に受け止められる
無痛分娩のデメリット
- 麻酔によって下半身の感覚が鈍くなるため、産後しばらくは歩きにくくなる
- 血圧の低下によって気分が悪くなることがある
- 初産の場合、痛みが少ないためいきむコツが分からないことも
- 痒みや体温上昇などの副作用
- 後陣痛を強く感じることがある
- 費用がやや高い
ちなみに、現在主流になっている硬膜外麻酔による無痛分娩では、赤ちゃんへの影響はほとんどないようです。
無痛分娩に反対? 精神論に振り回される男性
さて、この無痛分娩に対して、かなりの偏見を持っている男性もいます。
- 「痛みに耐えてこそ母親」
- 「出産の痛みがないと、母親としての自覚が芽生えない」
- 「痛みを伴ってこそ、子供への愛情が深まる」
- 「自然の出産に反する」
などなど、無痛分娩に反対する男性の中には、麻酔による影響やリスクを理由としてあげる人よりも、母性や子供への愛情といった精神論的なものを主な理由としてあげている人も多いようです。
これだけ時代が進み、イクメンだとか育パパだとか言われるようになってもなお、こんな意見があることに驚いてしまいます。出産を経験できない男性だからこそ、お産の痛みを神格化してしまうのかもしれませんが、これは全く的外れな意見としか言えません。
出産の痛みを経験してこそ母親、というのなら、帝王切開で出産したママも母親の自覚がないのでしょうか?無痛分娩が当たり前の欧米のママたちは、母親失格なのでしょうか?そんな馬鹿げた話はありませんよね。
お腹の中にいる子供と10か月もともに過ごして、母親の自覚や愛情がわかないわけがないでしょう。出産の痛みとその後の育児には、何の関係もないのです。
経験できない痛みを「我慢して当然」と言うな!
日本人は精神論や根性論が大好きですが、
- 「頑張ればできる」
- 「努力すればできないことはない」
という考え方を出産や育児に持ち込むことは、大きな間違いです。そもそも、痛みを我慢することに何のメリットがあるのでしょうか。誰だって、痛いのは嫌ですよね。
出産の痛みは耐え難いものです。
2回普通分娩で出産した私も、もう絶対にあの痛みは経験したくないと強く思います。だからこそ、出産の痛みを知らない男性が「みんな痛みに耐えて産んでいる」「女なら我慢して当然」などと言うことに対して、非常に憤りを感じます。自分が経験できない痛みを我慢することを、自分の子供を産んでくれる妻に対して強要するなんて、横暴以外の何物でもありません。
楽をして何が悪いの!?
現代では「分娩時の痛みを適切に取り除くことは、安全なお産のために重要である」と考えられています。
無痛分娩は、完全に痛みがなくなるわけではありません。陣痛の痛みを「10」だとすると、それを「7~8」くらいに抑える程度なので、痛みは感じます。それでも、出産時の痛みが和らぐということは、それだけママの精神的なリラックスにもつながりますから、赤ちゃんも産道を通りやすくなり、お産がスムーズに進むことが多いのです。
また、無痛分娩の場合は、痛みによる体力の消耗が少ないため、普通分娩よりも産後の回復が早いことが知られています。激しい痛みに何時間も耐える普通分娩とは、疲労感が全く違うことは容易に想像できるでしょう。
産んだら終わりではない
産後は、すぐに不眠不休の育児がスタートします。
そのスタートを、ママが肉体的にも精神的にも安定した状態で切れることは、何よりもいいことではないでしょうか?出産はゴールではないのですから、今後の育児のためにも、より負担の軽い、楽な方法を選ぶことは何も間違っていないと思います。
こうしたメリットや、命がけで出産する女性の気持ちを無視して、精神論だけで無痛分娩に反対する権利は、たとえ夫であっても持ち合わせていないはずです。今どき「痛みを感じないなんて母親失格」などという理由で無痛分娩に反対している男性は、自分の無知をひけらかしているようなものだということを肝に銘じておいてください。
出産は、女性の我慢比べや根性比べの場ではありません。まして、子供に対する愛情の大きさは、出産方法によって変わるものではないのです。本当に大切なのは出産方法ではなく、その後の育児のあり方だということを忘れてはいけません。