赤ちゃんのケアで悩むのが予防接種ではないでしょうか。
体調を崩すと接種できませんがひとつ接種時期がずれると、それ以降のスケジュールを全部見直さなければなりません。
ここに仕事の都合が入るとどうでしょう? さらに「小児科の予約」という制約が加わると「打てないよ!」と思えませんか? なかなかハードな予防接種スケジュールを確実にこなすためのコツを紹介します。
予防接種の種類
人の体には免疫という働きがあります。これは、感染した病気を体が記憶し、それに対する抵抗力を獲得して、次、感染しても症状が軽くなる、というものです。
本来は病気に感染して獲得していく抵抗力ですが、これを「病気に感染したような状態を作り出して、病気に感染せずに抵抗力をつける」というのが予防接種です。ワクチンを飲んだり、注射したりして体内に入れ、抵抗力を獲得します。
このワクチンには「生ワクチン」と「不活化ワクチン」があります。海外では「遺伝子組み換えワクチン」というものもありますが、日本ではほとんど使われていません(犬用のワクチンで一部、認められたものがあります)。
生ワクチン
病気にかかる原因となるウイルスや細菌を弱らせ、人が病気にならないけれど抵抗力は獲得できる、という状態にしたもの。稀に、病気に感染したような症状が出るケースがある。しかし、1回の接種で抵抗力を得られる確率が高いのがメリット。
不活化ワクチン
ウイルスや細菌の感染力をゼロにして、人が抵抗力をつけるのに必要な成分だけにしたもの。これを接種しても病気に感染することはないので生ワクチンより安心と言われる。ただ、1回では抵抗力が得られないので、2回、3回と打つ必要がある。
日本では「定期予防接種」というものがあり、0歳の時からスケジュールを組んで打つよう推奨されているワクチンがあります。これは、感染すると重症化する可能性が高い病気に対するワクチンです。
何本も注射器を赤ちゃんに刺すのはかわいそう! と思うかもしれません。しかし、予防接種を受けることで、感染する確率を低くしたり、感染しても重症化することを避けられるなら打っておいた方がいいと思いませんか?
定期予防接種以外に、個人の意志で接種できる「任意予防接種」というものもあります。これは個人の意志、職業上の理由、海外渡航など、ケースバイケースで接種するものです。
- インフルエンザ
- おたふくかぜ
- 髄膜炎菌
- 狂犬病
- 破傷風
- 黄熱病
などです。
予防接種のスケジュールの立て方
定期予防接種や任意予防接種の数はとても多く、接種間隔や回数も違います。このため、自分でスケジュールを立てるのは少々難しいといえます。
ですから、小児科で相談したり、webサイトを活用して推奨スケジュールを確認しましょう。とても解りやすく、新しい情報を得られるのが「NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会」というHPです。
ワクチンの中には、同時に接種できるものと単独で接種するものがあります。接種回数、接種の間隔などもワクチンによって違いますので注意が必要です。
また、生ワクチンだったポリオワクチンが不活化ワクチンになったり、三種混合だったワクチンが四種混合になったり、ヒブワクチンや水疱瘡のワクチンが定期接種になったり、子ども向けの予防接種は変化が大きく、情報がめまぐるしく入れ替わります。
自治体からの連絡、ニュース、ワクチンに関するサイトなどをチェックして接種スケジュールを考えてくださいね。
予防接種を受ける方法
予防接種のうち定期予防接種は無料で受けることができます。決められた年齢・期間内に決められた回数、無料で接種できますよ。
子どもが生まれたら市役所で出生届などの手続きをしますよね。この時に
- 予診票
- ワクチンの説明書
- 予防接種を受けられる病院リスト
等をもらうことができます。これらを確認し、忘れないように接種しましょう。
なお、引っ越しをしたら必ず市役所で手続きをしましょう。ほとんどの場合、予診票は「市」が発行しています。違う「市」に引っ越したら新しい予診票をもらわなければなりません。引っ越しする時は、住民票の移動の他に、子どもに関する手続きのひとつとして「予防接種の予診票の手続き」も確認してくださいね。
【予防接種の受け方】
- (1)発熱していないか、熱を測る(37.0度を超えると接種できないケースあり)
- (2)ワクチンの説明書を読み、予診票を記入する。
- (3)病院で予防接種を受ける。
- (4)接種後、20~30分、病院内に居て、体調の急激な変化がないかチェック。
- (5)帰宅。その日は一日、激しい運動を避ける。お風呂はOK。ただし、接種した場所を擦ったり揉んだりしないこと。
予防接種を受けた後、1~2週間は発熱・嘔吐・下痢などの症状がないか注意しましょう。なんらかの体調変化があった場合は
- どんな予防接種の後か
- どんな症状なのか
- いつから
- どれくらいの期間続いたのか
メモしておきましょう。
症状がひどい場合は病院で診てもらいます。その時に母子手帳を持参して、接種したワクチンの話もしてください。
予防接種を受けるチャンスを増やすコツ
皆さん「予防接種の相互乗り入れ」ってご存知ですか?
自治体・医師会によりますが、同一県内で提携している病院なら、市町村が異なっても定期予防接種が可能、というものです。
A市に住んでいる人は、A市から定期予防接種の予診票をもらって無料で接種します。しかし、このA市からもらった予診票を使ってB市で接種することができる、という制度です。
私はA市に住んでいましたがB市で仕事をし、B市内にある保育園に子どもを預けていました。夫はC市で仕事です。行動範囲はA市だけではありませんし、私や夫がかかる病院というのはA市に限りません。
子どもの定期予防接種をA市以外、B市やC市で接種できる、ということは、予防接種を受けるチャンスが増えるということです。お住まいの自治体や医師会が「予防接種の相互乗り入れ」を取り入れていないか、web検索してみてください。
「XX県 定期予防接種 相互乗り入れ」というような検索方法で情報を見付けられると思います。
予防接種を打つ病院は3か所見付けておこう
共働きの場合、仕事の都合、保育園のイベント、子どもの体調、小児科の予約状況などで、予防接種を受けられる日が限定されますよね。できるだけ接種の機会は多く確保したいものです。
予防接種は「予約制」「予防接種の曜日や時間が決まっている」「診療時間内ならいつでもOK」など、病院によってルールが異なります。できれば、複数の病院のルールをチェックし、接種病院を3か所確保しておきましょう。
- (1)家の近くの小児科
- (2)職場近くの小児科
- (3)予約なしで打てる小児科
これだけ確保しておけば、体調を崩して予定通りに接種できなくても、予備日を設けて接種し易くなります。特に(3)の予約なしで打ってもらえる病院は非常に助かりますよ。
今日は大丈夫そうだな、そんな日の仕事帰りに寄って打ってもらう。これができるとスケジュールの進行速度がグッとあがります。
ちなみに、年配の先生の方が注射は上手な傾向にあります。子どもが注射されたことに気付かないくらい上手な先生もいますから、注射が苦手な場合は先生を見て決めるのもいいと思います。
ただし、アレルギーがあったり、副作用の経験がある人は、かかり付けの小児科で打つようにしましょう。接種後、なんらかの症状が出た時のことを考えると、かかり付けの方が安心です。
予防接種の副作用
ワクチンは病気の感染に有効ですが、副作用があるのも事実です。副作用の内容は、軽度なものから重度なものまで様々です。
<予防接種の副作用の例>
- ワクチンを打った場所が腫れる
- 発熱
- 蕁麻疹
- 痙攣
- 嘔吐
- ショック症状
- 歩行困難
- コミュニケーション障害
重度な副作用の一部は、接種の直ぐ後に現れることがあります。このため、予防接種を打った後「30分間は院内に居て様子をみてください」と言われることがあります。
予防接種の副作用は軽度なものでも必ずチェックしておきましょう。そして、次のワクチン接種の時に医師と相談してから接種するようにしましょう。
万が一、重度の副作用が出た場合は医療機関に報告し、治療を受けると同時に「医薬品副作用被害救済制度」という制度を活用しましょう。
この制度は、予防接種などによって健康被害を受けた場合に受けられる補償制度です。定期予防接種を受けた後、副作用で被害を受けた時は、自治体に申請し、審査を受けて治療費などを受け取ることになります。
ワクチンに関するニュース
子ども向けの予防接種に関するニュースをいくつか紹介しましょう。新たなワクチンや、既に接種しているワクチンの変更など、いろいろ出てきますのでこまめに情報収集したいですね。
【ポリオワクチン、不活化ワクチンに変更】
ポリオワクチンは生ワクチンで単独接種するものでした。しかし平成24年9月1日に不活化ワクチンが導入され、平成24年11月1日に「ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオ」の4種混合ワクチンとなりました。
生ワクチンの時、ポリオは2回でした。4種混合ワクチンになってから4回接種になっています。
【子宮頸がんワクチン】HPV(ヒトパピローマウイルス)
子宮頸がんは、ガンの中でもワクチンで予防できる病気として注目を浴びました。小6~高1の女子を対象とした定期接種となりましたが、現在は「積極的に接種を推奨することはしない」ということになっています。
接種を強く推奨しない理由は「重度の副作用を訴えるケースが続いた」からです。
「子宮頸がん予防ワクチン」とのふれこみで接種されたHPVワクチン(サーバリックス・ガーダシル)によって、全身の疼痛、知覚障害、運動障害、記憶障害等の深刻な副作用被害が発生し、全国の多くの被害者が今なお苦しんでいます。
ワクチンは有効な感染予防・重症化を防ぐ手段です。しかし、そのワクチンで健康な体が深刻なダメージを受けることは大きな問題です。ワクチンのメリット・デメリットを再認識することになった例ですね。
【化学及血清療法研究所、ワクチン製造過程の無断変更】
日本国内で販売されている薬やワクチンなどは、製造工程・成分・効果・副作用などについて認可を受けています。認可を受けていないものは薬やワクチンとして製造・販売できません。
しかし「化学及血清療法研究所」が、血液製剤やワクチン(子どもの定期予防接種になっている日本脳炎のワクチン)を、認可を受けた方法とは違う方法で製造・販売していました。
【B型肝炎ワクチン定期予防接種化】
平成28年10月1日から、B型肝炎のワクチンが定期予防接種になりました。平成28年4月1日以降に生まれた0歳児が対象で、1歳になる前に3回打つ必要があります(1歳になると定期予防接種の対象から外れます)。
今後も予防接種の内容や方法、ワクチンなどが変わる可能性は大いにあります。子どもの健康に関わることなので、こまめにチェックし、正しい情報を得るようにしたいですね。