BabyNET

生活リズムを整えてストレスを減らすために。150以上の超具体的な赤ちゃんの寝かしつけのコツ。

孫育てで離婚|欠けていたもの

孫育てで離婚|欠けていたもの

共働き、それも夫婦共にフルタイム勤務という世帯も多い今、祖父母が子育てに参加する「孫育て」が当たり前のようになっています。

しかし、この孫育ては祖父母にとってリスクが高いだけでなく、夫婦関係が冷え込み、離婚にまで発展するケースがあると知っていますか?

孫育てに潜むリスクと、回避する方法、孫育て活用術を紹介します。

孫育てが離婚の原因になることも!

孫育てが離婚の原因
Aさん夫婦は夫婦共働き。夫は残業や休日出勤が多いフルタイム勤務で、妻は不定期休みのフルタイムのシフト勤務、年子の息子2人は別々の保育園という都内に住んでいる家庭の話です。

自宅から徒歩5分の所に夫の実家があり「いつでも手を貸すからね」と快く協力を申し出てくれていました。夫の実家(義両親)の手を借りることに抵抗があったものの、妻の実家は遠方。手を借りられれば育児と仕事の両立が楽になります。

妻は育休1年で仕事に復帰しました。妻はシフト勤務で連休がなく、ゴールデンウィーク、盆休み、シルバーウイーク、年末年始といった休みがありません。

このため、祝祭日や土日は夫が息子2人の世話をするのですが、休日出勤が多い仕事です。祖父も現役で仕事をしていて出張が多く、実質的には祖母がひとりで孫育てをしていました。

  • 保育園からのケガや発熱のお迎え電話の対応
  • 熱を出した息子を早朝から祖母に預ける
  • 病気の息子を治るまで祖母に預ける
  • 夫が休日出勤するため、息子2人を祖母に預ける
  • 妻の急な残業で保育園の迎えを祖母にお願いする
  • 連休がないので皆で一緒に遊びに行くことができない

こうしたことが続くようになり、祖父母の金銭的・肉体的負担が増えていきました。運が悪いことに一年経った後、夫婦揃ってさらに激務の職場に転属となってしまいました。

保育園の送迎・発熱時などの呼び出し対応が完全に祖母の担当となり、祖母は3つの習い事を全て止め、友人達と食事に行ったり旅行に行くこともできなくなって、365日、孫中心の生活となってしまいました。

さらに祖母は一人暮らしをしている自分の母親の家へ月1回泊まりがけで行っていたのですが、これも難しくなってしまって、自分の母親との仲に溝ができてしまいました。

こんなことが積もり積もって妻が仕事復帰して約2年後、祖母がついに爆発しました。

「子育てできない嫁なんて必要ない! 離婚しなさい! 離婚しないなら、今後一切、金銭面も労働面も援助しないから! 自分の子供は自分で育てなさい!」

Aさん夫婦は突然、祖父母の手を借りられなくなりました。妻の実家は遠方です。さらに妻の実母は入退院を繰り返している状態で頼れません。介護に行かなければならない状態です。

今まで祖母に頼りっきりで、援助サービスを調べたり登録したりしていなかったため、本当に夫婦だけで子育てすることになってしまいました。

仕事は突然減ったりしません。夫は激務の合間をぬって保育園の送迎を担当していましたが、体調を崩し、循環器系に異常が起こり、血尿が止まらず緊急入院。

妻は、突然休むことが増え、プロジェクトや担当していた出張を断ることが続き、徐々に同僚との仲が険悪になっていきました。そして肉体的・精神的な疲労が重なり、入院一歩手前・鬱病のような状態になってしまいました。

両親が倒れたために息子2人は祖父母の家に引き取られました。もともと息子2人は祖父母の家に入り浸っていたので祖父母にとても懐いています。

息子達は、バタバタ落ち着かない母親や、いつ帰ってくるか解らない父親と家にいるより、自分たちとじっくり向き合って世話をしてくれる祖父母と一緒に家にいる方が楽しいと言うようになっていました。

「仕事を辞めて子育てするか、離婚して親権を放棄しなさい。決意するまで子供と会わないで!」

妻はそう義両親に迫られ、精神的に追い詰められています。彼女は離婚を口にしていますが、親権は絶対に手放したくないと言っています。

しかしこれまでの生活を振り返ってみると、夫や孫育ての実績がある祖父母達と真っ向勝負して、息子2人の親権を主張するのは難しいと言えます。

夫は離婚を望まず、パート勤務にするか、退職して子育てに専念しながら祖父母と関係を修復して欲しいと言っています。

夫婦仲は冷え切っていて、夫婦関係・義両親との関係などがギスギスしたまま話し合いが続いています。

孫育ての問題点はなにか

孫育ての問題点
極端な例、と思うかもしれません。しかし、現実にあった話です。このAさん夫婦と祖父母の間にあった問題はなんでしょう。

最も大きな問題は「祖父母の生活を壊した」ということだと思います。ひとつ屋根の下で生活を共にしている状態で、家事分担などを明確にしていたならこうはならなかったでしょう。

  • 祖父母は別の家で生活している
  • 祖母がひとりで男児2人を世話していた
  • 祖母は趣味を諦めた
  • 祖母は友人達との付き合いを断つことになった
  • 祖母は自分の親との関係に亀裂が入ってしまった
  • 祖母はいろいろ諦めているのに、妻は自由に仕事を続けキャリアを積んでいる
  • 孫育てのための金銭的、肉体的な負担が大きい

こうした「祖父母の生活を破壊するほどの依存」というものが「離婚」や「親権を手放せ!」という強い言葉に繋がったのだと思います。

特にこの祖母は「仕事を辞めて子育てに専念した」という過去を持っていたため、子育てせずに仕事を続け、キャリアを積んでいく嫁を理解できなかった、という心情的なことも関係していたようです。

さらにAさん夫婦は祖父母に「感謝の意」を示していなかったのも問題でした。夫からすれば「実の親」なので感謝の意を直接伝える、ということが「気恥ずかしい」ことであり、また「親には遠慮が無い」ということだったのでしょう。

妻の立場からいえば祖母は姑です。嫁姑というだけで複雑な関係になりますよね。また、この妻と義母の間には価値観が合わず衝突したことが結婚前からいろいろあったようです。妻の方から義母に直接、顔を合わせて礼を言ったり、口だけでも上手に姑を立てる、ということがなかったようです。

姑からすれば、自分は仕事を諦めて自力で子育てした、という自負があります。しかし、嫁は子育てをせず、自分たちの生活リズムを壊し、趣味なども諦めさせられた上に、息子が倒れるような状況になった。これでは姑が激昂するのも仕方がなかったかもしれません。

祖父母は高齢者である

孫育てをする人の身になろう

ついつい忘れがちなのが、祖父母は高齢者である、ということです。体力的にも精神的にも若い頃のようにいかない、と感じている人達です。

いくら「元気」「張り合いになるから」「ぼけ防止」といっても、エネルギーの塊とも言える子供を毎日世話することは大きな負担になります。

年齢を重ねた人は体調を崩すと回復までに時間がかかります。また、病気のリスクも若い人より高く、入院や手術といったことになると元のように元気になる保証がありません。

Bさんの例を紹介します。Bさんの義母は70歳を過ぎても営業で1日10か所以上の事業所を自転車で走って回るパワフルな人で、「孫の保育園も喜んで送り迎えする! 今は孫育てが当たり前!」と張り切っていました。しかし突然見付かった癌の手術で入院。10日後に退院したのですが、体調不良が続いて3か月間、入退院を繰り返しました。

この結果、退院後は以前とは全くの別人。自転車どころか歩くことも大変で、1日3,000歩を欠かさず歩くよう日々、努力を続けているという状況です。これ以上、衰えないように努力を続けるのに必死で、孫の世話なんてとてもできない、ということになってしまいました。

どんなに元気な人でも病気をしない保証はありません。そして入院というようなことになれば、体の機能が一気に低下します。そこから元のように回復するまで、どれくらいかかるでしょう。

また、保育園ではいろいろな病気が流行します。保育園の送迎をしたり、園児と接している祖父母は、常に病気のリスクと向き合っていることになります。

高齢者はインフルエンザに感染すると重度の肺炎になる危険が高く、また、胃腸炎などに感染すると嘔吐や下痢で脱水症状に陥り、命の危険に晒されることもあります。

病気に感染する可能性を考えると孫育ては感染リスクが非常に高く、感染予防なくして孫育てはあり得ないとも言えるでしょう。祖父母は高齢者です。それを忘れないようにしたいですね。

孫育てに欠かせないもの

孫育てに欠かせないのは思いやり
そうはいっても、夫婦共働きでは祖父母の手が欠かせません。孫育てをお願いする際、どんなことに注意すればいいでしょうか。

  • 祖父母の考え方、価値観、意向(本音)を確認する
  • 依頼する内容を具体的に明示し、それ以外を依頼しない
  • 祖父母の負担を定期的に見直す
  • 祖父母の生活リズムを大きく崩さない
  • 祖父母はあくまで補助と考える(子育てのメインにしない)
  • 祖父母が体調を崩した時のケアを忘れない
  • 感謝の意をこまめに目に見える形で示す

なにかあった時、パッと頼ることができる祖父母の手はとても有り難いものです。しかし、2度3度と助けてもらっていると、それが当たり前のようになってしまって、ありがたみを忘れがちです。

「助けてもらっている」という感覚が麻痺していくと、これくらい……これくらい、とかける負担が大きくなっていきます。その負担の積み重ねが大きなトラブルに発展する危険がありますから注意しましょう。

なかなか難しいのが「感謝の意」をどのように示すか、ということ。どんなことが嬉しいのか、人それぞれですよね。

  • 毎回、ありがとうとお礼を言う
  • 定期的にお礼の食事会を開く
  • 休息日を作る
  • 食費や依頼費などを決めて支払う
  • 出張などの度にお土産を渡す
  • 記念日にプレゼントなどを贈る

どういう方法が嬉しいか。祖父母の人柄や負担内容を考えながら決めましょう。お礼なんていい。お金なんていらない。そんな風に言ってくれる祖父母もいます。ですが、その言葉をそのまま受け取っておんぶに抱っこ、ということでは、遠からず、押さえ続けた祖父母の本音が爆発! ということになるでしょう。

定期的に「手助けしてよかった」と祖父母が思えるようなことをするようにしたいですね。

ただ、祖父母の中には「近くにいるのに全く頼られないのが不満」という例もあります。頼られ過ぎるのもつらいですが「頼られないのも悲しい」ということに繋がりかねません。

頼りすぎはNG、頼らないのもNG、さじ加減が難しいのですが、ちょうどいい距離感を探っていい関係を保っていきたいですね。

祖父母以外に頼れるサービスを確保しよう

孫育て以外のサービス
祖父母の手は頼れる手なのですが、なにかあった時に利用できる他のサービスを確保しておきましょう。利用できるサービス、知っておきたいサービスを紹介します。

病児・病後児保育

病気だったり回復期の子供を預かってくれる保育園です。自治体が管理していたり、団体に事業を委託している例が多いのですが、民間がサービスを提供していることもあります。

認可保育園内に設置されていたり、病院内に託児所があったり、民間の場合は自宅にベビーシッターを派遣してくれることもあります。自治体が運営している病児・病後児保育であれば、おやつ・昼食込み1日3,000円前後で利用できます。

定員が少なかったり、医師の診察を受けた後でなければ利用できない、といった制約がありますが、確保しておくといざという時に有り難いサービスです。

ベビーシッター

民間サービスで、入会金・月会費などを支払う必要がありますが「今日、すぐに!」という緊急の保育もお願いできるという大きなメリットがあります。

自宅にシッターが来てくれるので、送迎の手間などが省けます。利用料は1時間2,000円~3,000円くらいが多いようです。

ファミリーサポート

厚生労働省が考案したサービスで、地域住民同士で子育て支援し合うというものです。自治体から援助を受けている団体が「子育てを支援したい人」と「支援を受けたい人」を募り、会員登録してもらった上で、会員同士で子供を預かるなどの支援をし合うことを仲介します。1時間700円前後の低料金で利用できることが魅力です。

ただ、援助してくれる人が保育士や看護師ではないため、お願いできる内容が限られたり、一時的・補助的・軽度の支援内容に限られるといった制約があります。

シルバー人材センター

こちらは自治体などから支援を受けて運営している団体で、いろいろな技術を持つ意欲ある高齢者が所属しています。意外に知られていませんが、子育て支援を受けることもできます。

支援してくれる内容は自分が住んでいる地域を管轄するセンターに相談しなければなりませんが、保育園の送迎をお願いしたり、親が帰宅するまで自宅で小学生の世話をしながら夕食の準備をお願いする、といった依頼が可能です。利用料金も依頼内容によりますが1時間1,000円前後で利用できることも魅力的です。

家政婦

こちらは子育て支援というより、家事を委託することになります。ただ夫婦共働きだと、買い物、夕食の準備、掃除、風呂の準備などをお願いできると助かりますよね。小学生の子供が学童から17時に帰宅。同じ時刻に家政婦さんが家に来て食事の準備や掃除、風呂準備などをしてくれる、というのは悪くないと思いませんか? 利用料金は1時間3,000円前後から、と高めですが息抜きなどにも活用できそうです。

こうした複数のサービスを確保しておくと、祖父母に孫育ての負担をかけすぎるということはなくなるのではないでしょうか。それぞれの特性を上手く利用すれば、妻の家事負担を軽減することもできてプラスになることが多くありそうです。

上手に祖父母の手を借りよう

孫育ての上手なやり方
身近な大人の手、特に祖父母の手はとても借りやすい子育て援助です。しかし、祖父母には祖父母の生活があり、子育てに対する考え方・価値観があります。

  • まだまだ若い。
  • 孫のためならなんでもできる!

そんな風に思い、懸命に力を貸してくれる祖父母も多くいます。しかし、本当にその言葉に甘えていいか、冷静に考えてみる必要があります。

金銭的にも肉体的にもどれほど援助をお願いできるか、人それぞれ違います。頼られないことを残念に感じ「孫のために頑張っている!」という実感を求める祖父母もいます。どれだけなにをお願いするのか。ちょうどいい関係を築きたいものです。

祖父母は高齢者であり、病気にかかる可能性が高く、病気から回復するのに時間がかかるということも忘れてはいけません。健康管理に気を配り、病気になった時のケアを欠かさないようにしましょう。

孫育てを生きがいに感じる祖父母も居ます。しかし頼りすぎると祖父母の生活を壊してしまう危険があり、依存しすぎると祖父母になにかあった時、即時、仕事に支障がでて親が困ることになります。

子育て支援サービスは複数あります。身近なサービスを日頃から探しておき、複数のサービスをうまく組み合わせて活用するようにしたいですね。祖父母の手は補助的なものとして考えておくと、なにかあった時でも困ることがありません。

また、お金はかかりますが、家事の負担が軽くなったり息抜きができるといったメリットもあります。

ついつい頼ってしまいがちな祖父母に頼りっきりという子育てはリスクが高いと言えます。いろいろな子育て支援サービスを併用して、祖父母と上手く付き合いながら仕事と育児の両立を図りたいですね。

Return Top